2011年07月01日
サマリー
名古屋議定書は、遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS:Access and Benefit Sharing)のルールとして採択されたものである。COP10では生物多様性の保全と持続可能な利用を目指すため、2010年以降の目標として「愛知ターゲット(2020年までに少なくとも陸域の17%、海域の10%を保存)」も定められた。
COP10では、遺伝資源や生態系を保有するものの、開発のさまたげになるような保護域は広めたくない途上国と、これらの資源を医薬品や化学合成物の開発に利用し、保護のための支援をする先進国の意見が対立した。最終的には議長国の日本が出した議長案で決着はついたものの、あいまいな点もあり、今後も実効性を高める努力が求められる。
人類は生態系から多様なサービス(生態系サービス)を受けているが、この基盤は生物多様性である。COP10では、生態系の破壊や生物多様性の損失が引き起こす経済的損失や、保全によるビジネスチャンス(図表1)を、具体的な事例と共に紹介する「The Economics of Ecosystems and Biodiversity (TEEB)」の最終報告書が発表された。COP10における原産国と利用国の対立は、温室効果ガス削減やレアアースと同様の構図を浮き彫りにさせた。一方この対立は、生物多様性の持つ「資源」としての価値を認識させるきっかけになったともいえる。
図表1 生態系サービス・生物多様性の経済的価値

(参考文献)WRI(World Resources Institute)「企業のための生態系サービス評価(ESR)」 [9.37MB]
(出所)大和総研作成
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
生活費危機の時代に重要な「生活賃金」
多様なステークホルダーとの「賃金をめぐる対話」が企業の課題に
2025年09月18日
-
EUサステナ開示規制の域外適用見直しへ
米国とEUは関税合意の一部としてサステナ開示の域外適用を見直す
2025年09月12日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日