2011年07月01日
サマリー
2011年5月11日、日本、グアテマラ、インドネシア、インド、ノルウェー、南アフリカ、スイス、チュニジアの8カ国が生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)で採択された「生物の多様性に関する条約の遺伝資源の取得の機会及びその利用から生ずる利益の公正かつ衡平な配分に関する名古屋議定書(名古屋議定書)」に署名した。すでにコロンビア、イエメン、ブラジル等13カ国が署名しており、合計で21カ国になった。50カ国目の批准書、受諾書、承認書又は加入書の寄託から90日後に発効する。
名古屋議定書は、遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS:Access and Benefit Sharing)のルールとして採択されたものである。COP10では生物多様性の保全と持続可能な利用を目指すため、2010年以降の目標として「愛知ターゲット(2020年までに少なくとも陸域の17%、海域の10%を保存)」も定められた。
COP10では、遺伝資源や生態系を保有するものの、開発のさまたげになるような保護域は広めたくない途上国と、これらの資源を医薬品や化学合成物の開発に利用し、保護のための支援をする先進国の意見が対立した。最終的には議長国の日本が出した議長案で決着はついたものの、あいまいな点もあり、今後も実効性を高める努力が求められる。
人類は生態系から多様なサービス(生態系サービス)を受けているが、この基盤は生物多様性である。COP10では、生態系の破壊や生物多様性の損失が引き起こす経済的損失や、保全によるビジネスチャンス(図表1)を、具体的な事例と共に紹介する「The Economics of Ecosystems and Biodiversity (TEEB)」の最終報告書が発表された。COP10における原産国と利用国の対立は、温室効果ガス削減やレアアースと同様の構図を浮き彫りにさせた。一方この対立は、生物多様性の持つ「資源」としての価値を認識させるきっかけになったともいえる。
図表1 生態系サービス・生物多様性の経済的価値

(参考文献)WRI(World Resources Institute)「企業のための生態系サービス評価(ESR)」 [9.37MB]
(出所)大和総研作成
名古屋議定書は、遺伝資源へのアクセスと利益配分(ABS:Access and Benefit Sharing)のルールとして採択されたものである。COP10では生物多様性の保全と持続可能な利用を目指すため、2010年以降の目標として「愛知ターゲット(2020年までに少なくとも陸域の17%、海域の10%を保存)」も定められた。
COP10では、遺伝資源や生態系を保有するものの、開発のさまたげになるような保護域は広めたくない途上国と、これらの資源を医薬品や化学合成物の開発に利用し、保護のための支援をする先進国の意見が対立した。最終的には議長国の日本が出した議長案で決着はついたものの、あいまいな点もあり、今後も実効性を高める努力が求められる。
人類は生態系から多様なサービス(生態系サービス)を受けているが、この基盤は生物多様性である。COP10では、生態系の破壊や生物多様性の損失が引き起こす経済的損失や、保全によるビジネスチャンス(図表1)を、具体的な事例と共に紹介する「The Economics of Ecosystems and Biodiversity (TEEB)」の最終報告書が発表された。COP10における原産国と利用国の対立は、温室効果ガス削減やレアアースと同様の構図を浮き彫りにさせた。一方この対立は、生物多様性の持つ「資源」としての価値を認識させるきっかけになったともいえる。
図表1 生態系サービス・生物多様性の経済的価値

(参考文献)WRI(World Resources Institute)「企業のための生態系サービス評価(ESR)」 [9.37MB]
(出所)大和総研作成
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
実運用段階に入った国連管理型カーボンクレジットの利用可能性
供給制約と利用制度の要件を踏まえたクレジット活用の視点
2026年09月04日
-
2026年3月期有報の人的資本開示②
「従業員給与等の決定方針」に何が書かれていたか
2026年08月17日
-
ボランタリー・カーボン市場(VCM)の動向と国際取引の課題
高品質クレジットの流通を支える市場・制度基盤の整備
2026年08月14日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

