サマリー
◆本稿では2021年より順次公表された総務省「2019年全国家計構造調査」を基に、富裕層の資産保有状況(金融資産、住宅・宅地資産)を分析する。
◆純資産総額のトップ1%世帯における資産内訳を確認すると、平均的には「住宅・宅地」の比率が高く、他の階級との純資産総額の差を生み出す主因であった。ただ、富裕層のポートフォリオは一様ではなく、地域によって異なる。例えば東京都は沖縄県に次いで、純資産総額1億円以上世帯における「住宅・宅地」の資産比率が高い。東京都はそもそも住宅地価格が高く、東京都の中でも都心部においては、近年顕著な価格上昇も確認できる。一方で地方都市においては、資産のうち住宅・宅地よりも金融資産の比率の方が高いケースも見られる。
◆また富裕層の分布には地域の偏りが見られる。純資産総額が1億円以上の世帯のうち、東京都の世帯数は32%を占め、上位5地域で64%を占める。他方、金融資産1億円以上世帯の分布をみると、東京都が18%、上位5地域で見れば全体の55%を占め、分布の偏りが純資産総額ベースよりも幾分か小さい。
◆地域によっては住宅・宅地価格の上昇が見られる中、富裕層の資産選択行動が変化していくか注目される。また、この点は大都市圏の富裕層に限らず、地方都市の富裕層の金融資産が大都市圏の住宅・宅地に向かうケースも想定される。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
大和のクリプトナビ No.3 ビットコインのポートフォリオ組入れ効果
GPIFの基本ポートフォリオをもとにした検証
2025年06月25日
-
議決権行使助言業者規制再導入の検討開始
米国議会で議決権行使助言業者規制に関する公聴会が開催された
2025年05月13日
-
大和のクリプトナビ No.2 暗号資産価格のリターン・ボラティリティ・相関の特徴
過去のリターンは、将来のリターンに対する一定の予測力が存在
2025年04月15日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日