富裕層資産の現状を読み解く

全体としては住宅・宅地の比率が高いものの、地域ごとに状況は異なる

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2022年03月17日

  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼

サマリー

◆本稿では2021年より順次公表された総務省「2019年全国家計構造調査」を基に、富裕層の資産保有状況(金融資産、住宅・宅地資産)を分析する。

◆純資産総額のトップ1%世帯における資産内訳を確認すると、平均的には「住宅・宅地」の比率が高く、他の階級との純資産総額の差を生み出す主因であった。ただ、富裕層のポートフォリオは一様ではなく、地域によって異なる。例えば東京都は沖縄県に次いで、純資産総額1億円以上世帯における「住宅・宅地」の資産比率が高い。東京都はそもそも住宅地価格が高く、東京都の中でも都心部においては、近年顕著な価格上昇も確認できる。一方で地方都市においては、資産のうち住宅・宅地よりも金融資産の比率の方が高いケースも見られる。

◆また富裕層の分布には地域の偏りが見られる。純資産総額が1億円以上の世帯のうち、東京都の世帯数は32%を占め、上位5地域で64%を占める。他方、金融資産1億円以上世帯の分布をみると、東京都が18%、上位5地域で見れば全体の55%を占め、分布の偏りが純資産総額ベースよりも幾分か小さい。

◆地域によっては住宅・宅地価格の上昇が見られる中、富裕層の資産選択行動が変化していくか注目される。また、この点は大都市圏の富裕層に限らず、地方都市の富裕層の金融資産が大都市圏の住宅・宅地に向かうケースも想定される。

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