コロナ禍で懸念増す単身世帯の金融資産形成

現状分析と今後の金融資産形成について

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2020年05月28日

  • ニューヨークリサーチセンター 研究員(NY駐在) 藤原 翼

サマリー

◆金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」[単身世帯調査](2019年)によれば、単身世帯のうち38%が、当座の生活資金以外の金融資産がない世帯に相当する。

◆単身世帯で金融資産形成が進んでいない世帯が多い背景としては、収入が上がらず低収入に留まる世帯が増加していることがある。単身世帯では、全ての年齢階層で低収入世帯の比率が上昇傾向にあり、「収入が低く、貯蓄に回す余裕がない」状態の世帯が多いと考えられる。

◆また、単身世帯で金融資産形成が進んでいない世帯が多い要因は他にも、生活設計への関心が低い世帯の増加や、金融資産形成に対する切迫感が弱いことなどがある。現役世代は老後の生活資金として、「金融資産の取り崩し」よりも「就業による収入」をあてにする傾向にある。しかし、コロナショックのように突然職を失う可能性もあり、早い時期から余裕資金を準備していく必要がある。

◆家計部門や企業部門など、経済活動への影響はリーマン・ショック時以上とも言われるコロナショックに直面している中、金融資産がない世帯の不安や危機感は高まっている。そのため、今回分析対象とした単身世帯をはじめ、新たに幅広い層が金融資産形成に目を向ける可能性も考えられるだろう。これまで、そうした層は既存の金融機関にとって主要な顧客層とは言えなかったかもしれないが、新しいニーズに対して、例えばFintechベンチャーとの協働などを通じた取り組みを強化するタイミングと言えるのではないか。

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