サマリー
◆日本銀行が「量的・質的金融緩和」を開始してから1年が経過した。この金融政策が狙う「ポートフォリオ・リバランス」効果は、家計の金融資産においても進んでいるのであろうか。本稿では、投資信託(以下、投信)における資金フローを中心にみた。
◆資金循環統計によると、家計の金融資産における株式・出資金は、フローベースでみると2013年中は売り越しが続いた。一方、投資信託受益証券についてみると、2013年のフローは8.4兆円の買い越しとなり、資金流入が活発化した。
◆追加型株式投信の資金流出入についてみると、株式市場と対照的な資金流出入の傾向がうかがえる。また、グローバル地域別の投信における資金フローの最近の特徴についてみると、①北米資産を対象とする投信は、足もとでは資金流入が定着していること、②欧州資産を対象とする投信は、欧州債務危機の沈静化に伴い、株式型を中心に資金流入超となっていること、③新興国資産を対象とする投信は、米国のテーパリング発言を契機に資金流出が定着していること、④日本資産を対象とする投信については、株式型への資金流入が定着していること、を捉えることができる。
◆足もとの動きについてみると、前年末の軽減税率終了の影響により、一時的に投信からの大きな資金流出が生じた。しかし、2014年に入り、前年末の反動に加え、NISA導入の影響もあり、前年末の資金流出額を超える資金流入がみられた。量的・質的金融緩和の狙いであるポートフォリオ・リバランス効果は、「家計の投信保有」という観点では実現しているとみられるものの、まだ途上である。NISAなどの制度の後押しも加わり、ポートフォリオ・リバランス効果がより深化した形で、家計の「貯蓄から投資へ」が実現する期待が高まりつつあるとみられる。
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