サマリー
◆2000年代の日本の株式市場では、家計の売買代金回転率が上昇する(平均保有期間が短期化する)トレンドがあった。インターネット取引等の取引手法の多様化が背景と考えられる。
◆家計の日本株取引は信用取引のシェアが高まり、信用取引の回転日数も短期化している。世代別シェアでは30歳代、40歳代のシェアがやや高まる傾向にある。
◆投信購入は高齢者層中心とみられるが、設定額、解約額が共に歴史的な高水準で、投信も短期的な視野での投資が中心である可能性が指摘できる。
◆このほか、個人向け国債は、過去発行分の中途換金(買入消却)が進み、発行残高の減少が続いてきた。また、株価指数先物の売買シェアやFX(外為証拠金取引)の建玉推移等からも、リーマン・ショック以降の世界市場の混乱のさなか、家計の資産運用は広く短期化している可能性が示唆される。
◆金利の設定方法が見直され、資金使途の明確化や感謝状が付される予定の個人向け国債は人気化している。「プラスα」の要素が付加されたことで資金を集める可能性はある。
◆当面は、待機資金として家計の流動性預金が増加する可能性があろう。短期的な取引が増えていることは、本格的な「投資」に至っていないと言えよう。家計金融資産の様々なニーズに対応するためには、金融商品の受け皿を整備するとともに、短期取引の弊害の理解を進める必要があるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
大和のクリプトナビ No.2 暗号資産価格のリターン・ボラティリティ・相関の特徴
過去のリターンは、将来のリターンに対する一定の予測力が存在
2025年04月15日
-
大和のクリプトナビ No.1 暗号資産価格の歴史的推移
需給の影響を受けやすく、足元では政策や機関投資家の動きも影響
2025年04月10日
-
「職場つみたてNISA」の仕組みと導入意義
ファイナンシャル・ウェルビーイングの向上も期待
2025年03月28日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日