家計の証券売買等は短期的な取引に

リーマン・ショック以降は若年層を中心にレバレッジをかけて短期化か

RSS

2012年01月12日

  • 土屋 貴裕

サマリー

◆2000年代の日本の株式市場では、家計の売買代金回転率が上昇する(平均保有期間が短期化する)トレンドがあった。インターネット取引等の取引手法の多様化が背景と考えられる。

◆家計の日本株取引は信用取引のシェアが高まり、信用取引の回転日数も短期化している。世代別シェアでは30歳代、40歳代のシェアがやや高まる傾向にある。

◆投信購入は高齢者層中心とみられるが、設定額、解約額が共に歴史的な高水準で、投信も短期的な視野での投資が中心である可能性が指摘できる。

◆このほか、個人向け国債は、過去発行分の中途換金(買入消却)が進み、発行残高の減少が続いてきた。また、株価指数先物の売買シェアやFX(外為証拠金取引)の建玉推移等からも、リーマン・ショック以降の世界市場の混乱のさなか、家計の資産運用は広く短期化している可能性が示唆される。

◆金利の設定方法が見直され、資金使途の明確化や感謝状が付される予定の個人向け国債は人気化している。「プラスα」の要素が付加されたことで資金を集める可能性はある。

◆当面は、待機資金として家計の流動性預金が増加する可能性があろう。短期的な取引が増えていることは、本格的な「投資」に至っていないと言えよう。家計金融資産の様々なニーズに対応するためには、金融商品の受け皿を整備するとともに、短期取引の弊害の理解を進める必要があるだろう。

このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。

執筆者のおすすめレポート