2014年04月09日
経営計画の策定は、企業にとって重要な業務のひとつであるが、様々な要因により計画が未達に終わることが多い。経営計画が未達に終わるパターンを分析すると、①内外の環境分析に問題があったケース、②そもそも目標のハードルが高すぎたケース、③経営ビジョンが浸透しないまま無理な計画を各部門に押し付けてしまっていたケースに大別される。逆にいえば、上記の3つのポイントを押さえることが、経営計画達成のカギを握ることになる。
例えば内外環境分析において、リスクファクターの洗い出しを行い、それらのリスクファクターが業績にどのような影響を与えるかを分析し、リスクが顕在化した場合の対応策を事前に準備しておけば、経営計画の精度を高めることができる。
このようなリスク管理を行うためには、モンテカルロ・シミュレーションの活用が有用だ。モンテカルロ・シミュレーションとは、変数に確率分布を設定し、乱数を発生させて確率実験を行う手法である。

まず最初のステップは、収益構造のモデル化である。利益の構成要素を売上数量や単価、原材料費や人件費などにブレークダウンするとともに、為替や金利、エネルギー価格・商品市況などの利益変動要因の影響も組み込んでいく。(モデル化)
作成したベースモデルに、事業計画・投資計画を入れてみて、どのような利益変動要因の変化がどれくらいの業績インパクトをもたらすかのシミュレーションを行う。(Key Risk Factorの整理)
また、このようなプロセスで明らかになったリスクファクターに対し、リスクを軽減するための施策を検討し、リスクが顕在化した場合の対応策を準備しておくことも重要である。(リスクへの事前対策)
リスクファクターを織り込んだ収益モデルができていると、経営計画の実行段階においてもメリットが大きい。リスクが顕在化した場合の対応策が迅速に実施できるからである。
その結果、Plan-Do-Check-Actionのサイクルを効果的に回すことができ、計画達成の確度を高めることができるのである。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
中期経営計画の近時動向 <2025年10月>
欧米の中期経営計画開示動向とその背景
2025年10月31日
-
シリーズ 民間企業の農業参入を考える
第3回 生産基盤としての耕地(1)
2025年09月05日
-
ROEの持続的向上のための資本規律の重要性
資本コストを真に意識した財務戦略への道
2025年05月02日
関連のサービス
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日

