改正労働契約法と検討ポイント

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  • マネジメントコンサルティング部 主席コンサルタント 元秋 京子

平成25年4月1日に「有期労働契約の無期転換ルール」が施行される。これは、パート、アルバイト、契約社員等の「期間の定めのある労働契約(以下、有期労働契約)」が、一定の条件により、「期間の定めのない労働契約(以下、無期労働契約)」に転換する義務を会社に課すものである。


改正労働契約法は平成24年8月10日に交付された。本改正は、反復更新される労働契約における雇止めの不安や期間の定めのあることによる不合理な労働条件の是正という、有期労働契約者の保護を目的とするものである。


上記無期転換ルールをはじめとして関連する改正点は以下の3点となる。


①有期労働契約の無期労働契約への転換(施行日:平成25年4月1日)
同じ会社で有期労働契約が通算5年を超えて反復更新された場合、労働者の申込みにより、無期労働契約に転換される。


②雇止め法理の法文化(施行日:平成24年8月10日)
既に最高裁判例で確立されている判例法理が、労働契約法に条文化された。 以下のいずれかに該当する場合で、その雇止めが「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は、労働者の申込みにより、これまでと同一の労働条件で、有期労働契約が更新されることになる。

  1. 契約の反復更新により、その雇止めが無期労働契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの
  2. 契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されることについて合理的な理由があると認められるもの

③不合理な労働条件の禁止(施行日:平成25年4月1日)
期間の定めがあることにより、期間の定めのない労働者と比較して不合理な労働条件を定めることを禁止する。


会社が検討するべきポイントとしては、無期転換後の労働条件をどうするか、今後の有期労働契約の取扱をどうするか、ということになる。

無期労働契約者とは

有期労働契約から転換された無期労働契約者は、正社員になる訳ではない。会社としては「無期労働契約者」を定義し、正社員と区分する形となる。労働条件についても「別段の定め」がない場合には、転換前と同一の労働条件を適用することとなる。ただし、同一の労働条件とはいっても、有期労働契約では考慮されていなかった長期雇用の視点(休職、解雇、定年、休職、欠勤・懲戒など)に係る調整・検討は必要となってくる。

今後の有期労働契約の取扱について

まず、会社はこれまでの有期労働契約の更新実態や、正社員と有期労働契約者の職務内容・責任程度等を比較し、今後の有期労働契約者の活用を考えた運用の在り方を検討する必要がある。


今後の有期労働契約の取扱としては、「雇止め型(雇止めルールを明示し、厳格に運用)」か「無期転換型」を選択することになるが、ここで注意したいのは、通算5年を超えなければ会社は自由に雇止めができる訳ではないということである。既存の有期労働契約が、前述②のa) b)のように、実態として無期労働契約と同視できるものや更新期待があるものとされる場合には、雇止め法理の観点から安易に「雇止め型」を選択することは難しく、労働者に対する会社方針の説明や正社員への登用制度等も併せて検討する必要があり、実行にあたっては専門家を交えることをおすすめしたい。


また、一方で「無期転換型」を選択した場合でも、転換前の労働条件を踏襲するだけではなく、対象労働者のモチベーションを考慮した制度(評価制度等)を検討し、活性化を促す工夫もしたいところである。


無期転換ルールの通算5年のカウントは、施行日以後に開始する有期労働契約からとなるので、具体的な対応をすぐに求められることはないが、本改正を機に、法対応だけではなく有期労働契約者の活躍を促す制度・環境の整備や契約形態の垣根を超えた一体感・結束力を醸成する施策等も含めて検討を行っていただきたい。

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