◎企業価値を観る視点
持続的な企業価値を生み出すためには役員が経営に対して責任を持つことが前提である。株主のみならず従業員や取引先と良好な関係を構築し、維持することが重要なポイントである。リーダーシップの発揮はもちろん、中長期的視点で事業モデルを俯瞰できる経営幹部の処遇はどうあるべきか?これはコンサルティングの領域のおける今日的なホットなテーマの1つである。今回は企業価値と役員報酬の関係を3回にわたり考察する。
企業価値には2つの視点がある。1つは事業収益を上げるための行動である。もう1つは収益を維持する監査的な行動である。簡単に言うと攻めの行動と守りの行動である。この両輪がバランスして良好な企業価値向上が実現できるはずだ。役員はアクセルとブレーキを環境変化に応じて上手く操作することが求められるのである。
ここをもう少し掘り下げよう。役員でも代表取締役は経営全般の責任を担う。次に取締役兼執行役員あるいは執行役員と呼ばれるグループは収益を高める役割を担う。一方で監査役や社外取締役と呼ばれるグループは守りの役割を担う。監査役は時には魅力的な投資案件が議論されてもリスクが極めて大きいという場合は「No」を言う勇気と決断が不可欠である。「No」と言わなければ責務を全うしたとは言えない。
仮に取締役会で行け行けドンドンの議論がされていても、「?」という案件に対しては修正を求めたり、「No」というのがあるべき姿のはずである。投資家の利益を最大化するにはこのような意思決定メカニズムが作用しなければならない。
◎役割に応じた報酬設計のポリシー
実際のコンサルティングの現場ではこのような議論からアプローチを開始する。いきなり役員報酬の金額を分析して、「競合企業と比較した結果、御社の役員報酬はこの程度が適切です」というような手順を踏むことはほとんどない。クライアント企業の収益構造や今後10年間業績がどのように推移するか、新規事業はどの程度仕掛けていくかなどの意見交換を行う。
その上で、不足する経営資源をいつどのような手段で調達するか、あるいは社内で育成するのか重要なポイントを抽出する。それを達成するために役員に何をどれだけミッションとして配分していくのか。この議論の過程があってこそミッションにふさわしい報酬体系の輪郭が透けて見えてくるのである。
役員報酬=固定報酬+変動報酬的な単純な捉え方ではなく、役員の動機付け、責任に対する対価、さらには従業員から見た魅力度を上手くマッチングさせるアプローチで報酬体系の刷新の第1歩を踏み出すのである。 強調したいことはアクセルを踏む役割とブレーキを踏む役割ではその対価としての報酬の設計の思想が異なるということである。
アクセルを踏む取締役の報酬には業績に応じて変動するインセンティブが必要であるし、ブレーキを踏む監査役の報酬には中立な判断を適確に行うため、変動要素のインセンティブは設けないのが原則である。
次回は続きを現場からの実況中継方式でご紹介する。
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