サマリー
◆政府は2012年2月17日に「社会保障・税一体改革大綱」(以下、大綱)を閣議決定した。大綱の内容は、2012年1月6日に政府・与党社会保障改革検討本部が決定し同日に閣議報告した「社会保障・税一体改革素案」(以下、素案)とほぼ同じ内容である。
◆大綱に明記はないが、「社会保障の充実」として社会保障・税一体改革で新規に行う施策に充てる財源のネット所要額の総額は、2.7兆円程度(消費税率1%分)とされているものと考えられる。
◆しかし、大綱に記載された社会保障改革の各項目の所要額を積み上げて計算してみると、「給付抑制」のうち現時点で実現可能性が薄いと考えられる3項目を除外したとしても、ネット所要額は合計で1兆9,050億円となる。総額の2兆7,000億円程度という金額は、各項目の積み上げよりも、7,950億円、所要額が水増しして計算されていることになる。すなわち、「給付抑制」をほとんど行わなかったとしても(もしくは追加の「給付拡大」を行ったとしても)ネット所要額が2兆7,000億円に収まる計算になっているものと言える。
◆政府・与党は、大綱に記載した給付抑制項目のうち、何を実施して何を実施しないのか、より明確化すべきである。その上で、社会保障改革に必要なネット所要額を明示し、国民的な議論の土台とすべきであろう。
税制部分の解説は、吉井一洋「社会保障・税一体改革大綱 (税制概要)」を参照。
◆大綱に明記はないが、「社会保障の充実」として社会保障・税一体改革で新規に行う施策に充てる財源のネット所要額の総額は、2.7兆円程度(消費税率1%分)とされているものと考えられる。
◆しかし、大綱に記載された社会保障改革の各項目の所要額を積み上げて計算してみると、「給付抑制」のうち現時点で実現可能性が薄いと考えられる3項目を除外したとしても、ネット所要額は合計で1兆9,050億円となる。総額の2兆7,000億円程度という金額は、各項目の積み上げよりも、7,950億円、所要額が水増しして計算されていることになる。すなわち、「給付抑制」をほとんど行わなかったとしても(もしくは追加の「給付拡大」を行ったとしても)ネット所要額が2兆7,000億円に収まる計算になっているものと言える。
◆政府・与党は、大綱に記載した給付抑制項目のうち、何を実施して何を実施しないのか、より明確化すべきである。その上で、社会保障改革に必要なネット所要額を明示し、国民的な議論の土台とすべきであろう。
税制部分の解説は、吉井一洋「社会保障・税一体改革大綱 (税制概要)」を参照。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日