サマリー
◆確定拠出年金(DC)には企業型DCと個人型DC(iDeCo:イデコ)があり、両者間で個人資産を持ち運び(移換)できるポータビリティの機能を有している。企業型DCの加入者資格喪失時には、本人が自ら移換の手続きを行う必要があるが、その手続きをしていないために国民年金基金連合会に資産が自動的に移換される自動移換者が増えている。
◆加入者本人が主体となって老後の資産を形成するというDCの趣旨を踏まえると、自動移換者が増え続けることは制度普及の観点から問題である。また、自動移換された資産は運用されず手数料だけが控除され、資産額は目減りしていく。加入者にとって不利益であり、資産保護の観点からも対策が必要である。
◆現状を踏まえると、事業主による資格喪失時の移換手続きに関する説明を徹底させる必要がある。自動移換者を発生させない「入口」対策としては、加入者資格喪失者の移換先となるiDeCoを予め規定するなど制度的な対応が有効だろう。自動移換者を増やさない「出口」対策としては、DCの脱退一時金の受給要件を資産額が25万円以下とすること、資産額が0円の場合は自動移換の対象としないことなどを検討すべきだ。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
年金積立金の平滑化メカニズムにリスクはないか?
GPIFの2024年度3Q運用実績と年金財政の動向
2025年02月19日
-
少子化対策の財源確保に向けた医療・介護の歳出改革
医療・介護費の伸びを抑制する視点がますます重要に
2025年02月10日
-
2025年DC制度改正の論点
iDeCo加入可能年齢引上げ、拠出限度額引上げ、中小企業向けDC整備
2025年01月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日