DB運用見える化と従業員ファイナンシャル・ウェルネスの向上

事業主に求められるDB情報周知の強化と金融経済教育機会の充実

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2024年12月03日

サマリー

◆企業年金の運用の見える化の充実が検討されている。「資産運用立国実現プラン」では、企業年金の運用に係る情報を、他社と比較可能な形で一般に開示する案が盛り込まれた。背景には、企業年金が公的年金を補完する老後の所得確保の手段としてだけでなく、人的資本経営の観点からも重要との認識が高まっていることがある。従業員の利益最大化に資する企業年金の充実への取り組みが求められている。

◆企業年金・個人年金部会の議論によると、特に確定給付企業年金(DB)における運用の見える化には慎重な意見が少なくない。だが、情報を一般公開すれば、制度運営における透明性の向上やガバナンスの強化に加え、他社との比較情報を参考に事業主と受託機関の活発な意見交換の機会を通じて、運用の効率化を図れる期待も高まる。事業主には、さらに従業員の満足度を高めるわかりやすい情報周知への取り組みが求められる。

◆企業年金の充実は、従業員のファイナンシャル・ウェルネスの向上につながる期待が高く、事業主にとっても生産性向上という面でのメリットが大きいはずだ。それには、従業員へ退職後に向けた資産形成のサポートにつながる情報やアドバイスの提供が有用である。事業主は、運用の見える化を契機に、従業員へのDBの情報周知の強化だけでなく、金融経済教育機会の充実も進めていく必要がある。

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