Brexit により変革を迫られるEUの地域政策
『大和総研調査季報』 2018年春季号(Vol.30)掲載
サマリー
EUの地域政策は地域間の経済的、社会的格差の是正を目的とすると同時に、EUの経済戦略において重要な役割を担っている。主要な地域政策である「結束政策(Cohesion Policy)」はEUが地域発のプロジェクトに補助金を拠出する形をとり、2014 ~ 2020 年のEU予算の約3分の1を占める。
EUの地域政策は1957 年に調印されたローマ条約に端を発するが、それから60 年以上を経る中で地域政策もたびたび変革されてきた。08 年以降の金融危機とユーロ圏債務危機を踏まえ、現在の結束政策はEUの経済戦略である「欧州2020」実現のための手段としての位置付けがより明確化されている。すなわち、EUが必要と判断したインフラ投資、環境対策、雇用対策、構造改革などの推進を促すための手段である。
ただし、EUによる統制強化とEU予算に対する不満は、英国のEU離脱(Brexit)決定の一因となってしまった。Brexit が実現すれば、EU予算の規模が縮小し、結束政策予算も削減される見込みである。次の2021~ 2027 年予算をめぐる議論は5月に始まるが、「Brexit 後の結束政策」はEUの根幹に関わる重要なテーマとなり得る。
大和総研 リサーチ本部が、その長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、経済、金融資本市場及びそれらを取り巻く制度を含め、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
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