大学進学にともなう人口流出と地方創生

~東京23区の大学定員増加抑制が人口流出阻止の切り札なのか~

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  • 経済調査部 市川 拓也

サマリー

◆政府の「地方大学の振興及び若者雇用等に関する有識者会議」の中間報告を受け、文部科学省は次年度の収容定員増の認可申請に関し、23区の収容定員増でないことを認可基準とする等の対応策を講じている。2017年12月8日の最終報告を受けて、今後、法整備が進む見通しである。


◆全国の大学に在籍する学生のうち、実に5人に一人近くの約18%が23区で学んでいる。東京都全体では4分の1を占め、東京圏(東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県)で見れば学生数の割合は4割を超える。この背景には、出身高校が東京都である学生の増加もあるが、出身高校が東京都以外である学生の数の増加がある。


◆東京都の定員数、大学入学者数を固定した場合でも、地方の大学入学者数は2030年度、2040年度と一方的に減少する。地方の人口流出問題はいわば吸い込み口となっている東京都の過剰な定員が原因とみることもできる。だが、進学希望者にとっては満足できる教育を受けられる場や多様な選択肢があることが望ましいのも事実であろう。


◆大学進学時の人口流出問題を解く鍵は、なぜ進学希望者が東京の大学で学びたいのかという動機にある。進学先検討時の重視項目として、卒業時の就職が重視されているものの、必ずしも立地が地方大学を不利にしているのではなさそうである。受験生やその保護者などが望む教育が地方大学で提供されていない現実があるならば、教育の質向上に取り組むべきである。地方創生を先導する主体として地方大学を活性化させる余地はまだまだ大きいのではないか。

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