期待高まる地方創生へ向けた取り組み(3): 不動産証券化で地域活性化

~不動産特定共同事業法改正による空き家再生に期待~

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  • 経済調査部 市川 拓也

サマリー

◆空き家は増加の一途を辿っている。空き家の増加は地域の人口流出の結果だけでなく、同時に人口減の原因にもつながっている可能性がある。それだけに、地域の存続を考える上で差し迫った問題であるが、費用面の問題などから、売却等に踏み切れないといった事情もある。


◆不動産特定共同事業法の改正法案が先の国会で可決・成立し、6月に公布された。参入要件を緩和した小規模不動産特定共同事業を創設するほか、一般投資家の出資が制限されていた特定事業への出資も一部可能となる。クラウドファンディングによる場合の契約締結前の書面交付が不要となる。これらの措置により、不動産証券化を通じた空き家再生の促進が期待される。


◆複数ある不動産証券化手法の中でも、空き家問題など地域の問題解決には、信託受益権の設定が求められない不動産特定共同事業による手法が適当とみられる。従来は要件が厳しく、地域の不動産会社が容易に参入できる環境になかったが、今般の法改正により、ボトルネックが改善されることで、地域で小規模の不動産証券化が進むとみられる。


◆政府としても、成長戦略、地方創生策、観光政策において、不動産証券化を推進している。課題はあるものの、地域住民等の「志ある資金」が不動産証券化を通じて空き家の再生に活用され、観光客等の受け皿となれば、まさに地方創生である。志ある事業者と志ある投資家の思いを最大限引き出せるものとなることを期待したい。

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