サマリー
◆高齢者医療制度への財政負担が増す中でも、健保組合は加入者の予防・健康づくりに積極的に取り組んできた。2019年度の特定保健指導の平均実施率は27.4%とまだ低いが(政府目標は45%以上)、特定健康診査(特定健診)の平均実施率は79.0%と、政府目標の70%以上を超えている。
◆後期高齢者支援金の加算・減算制度では、2018年度以降、特定健診・特定保健指導の実施率の低い保険者で加算基準や加算率が引き上げられており、財政面からも実施率向上に向けた取り組みが一層重要になる。
◆これまでもデータを踏まえた科学的なアプローチが、健保組合の保健事業に求められてきたが(データヘルス計画)、その機運はさらに強まっている。健保組合が収集する特定健診・特定保健指導のデータは、政府が推進する医療・介護分野におけるデータ利活用等の基盤構築上も不可欠である。
◆企業にとって、従業員のQOL(生活の質)の向上は極めて大切であり、健保組合との協働(コラボヘルス)による健康経営が評価される仕組みも整備されてきた。健保組合によるデータヘルスの取り組みは、企業の経営戦略としても重要性をいっそう増すだろう。ただし、健保組合が保健事業を強化する上で、増加する高齢者医療の費用負担の伸びの抑制が課題である。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
健康経営の評価軸は「成果」へシフト
スコープは社会全体のウェルビーイング向上や経済成長にも拡大
2025年09月12日
-
従業員の経済的不安に、企業はどう応えるか
従業員の現在の備えと将来の資産形成を両立する米国企業の取り組み
2025年08月18日
-
若者の奨学金返済の不安をどう解消するか
給付奨学金の拡充、貸与奨学金は有利子から無利子への流れを加速
2025年05月09日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日