女性活躍による中小企業の生産性向上の余地

初期段階におけるキャリア形成の男女差の解消が課題

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2018年04月27日

  • 菅原 佑香

サマリー

◆人手不足が深刻さを増す中、中小企業の人材確保は一層厳しい状況にある。最近では、人材を確保できず収益が悪化し倒産する「人手不足倒産」が増加しているように、企業経営の観点からも人手不足への対応は喫緊の課題である。

◆中小企業における長時間労働者の割合は大企業より高い。人手不足の中で事業活動を続ければ、従業員一人当たりの業務負担が重くなり、長時間労働が常態化しやすくなる。2020年度から中小企業に時間外労働時間の上限規制が設けられるなど今後の制度改正を見据えると、従業員の意欲と能力に応じて力を発揮できる職場環境を整備するなどして生産性を引き上げる必要がある。

◆限られた人材資源を最大限に活用する観点から、中小企業での女性活躍の余地は大きいとみられる。女性活躍は、業績向上や組織活性化などの効果が実際に見られている。中小企業は女性を積極的に採用してはいるが、男性に比べて女性がキャリア形成の初期において知識やスキルを十分に身に付けられる機会が少ない可能性がある。

◆キャリアの初期段階は、男女ともに職業キャリアを形成するために必要な知識や経験を習得する重要な時期である。中小企業において女性が男性と同じような配置転換などの多様な機会が得られるように職場環境が整備されれば、意欲や能力を発揮しやすくなり、生産性向上や人材確保に寄与することが期待される。

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