多様な働き方を阻む日本の転勤問題

企業に求められる、不可欠な転勤の見極めと転勤の代替手段の検討

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2017年08月15日

  • 菅原 佑香

サマリー

◆現在、多様な働き方の実現に向けて議論されている「働き方改革」では、仕事と家庭の両立が大きな課題である。両立を阻んできた要因の一つに、転勤問題がある。近年、女性の就業率向上、共働き世帯の増加等の社会経済的な変化を背景として、企業はこれまでの転勤制度のあり方を見直す必要に迫られている。


◆転勤のために常住地を移動したのは年間595,500人にのぼり、仕事と家庭生活の間で葛藤するであろう25~44歳層がその6割超を占める。また、企業が転勤を行う目的は、労働者の人材育成のためという理由が多いが、必ずしも転居を伴う異動(転勤)でなければ、人材育成につながらないわけではない可能性がある。


◆厚生労働省が2017年3月に公表した「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」によれば、企業が、転勤に関する雇用管理を考える際は、まず異動の実態を把握し、自社にとって不可欠な転勤を見極め、雇用管理の類型ごとに取るべき運用を整理していく必要があるという。


◆企業にとってもコスト増となる不要な転勤を避け、労働者が転勤に伴う生活上の困難にできる限り直面しないような雇用管理を実現していくことが求められる。転勤制度の改革は、人々が中長期的な見通しを持った働き方と生活を両立するための大きな一歩になると考えられる。

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