サマリー
◆現在、多様な働き方の実現に向けて議論されている「働き方改革」では、仕事と家庭の両立が大きな課題である。両立を阻んできた要因の一つに、転勤問題がある。近年、女性の就業率向上、共働き世帯の増加等の社会経済的な変化を背景として、企業はこれまでの転勤制度のあり方を見直す必要に迫られている。
◆転勤のために常住地を移動したのは年間595,500人にのぼり、仕事と家庭生活の間で葛藤するであろう25~44歳層がその6割超を占める。また、企業が転勤を行う目的は、労働者の人材育成のためという理由が多いが、必ずしも転居を伴う異動(転勤)でなければ、人材育成につながらないわけではない可能性がある。
◆厚生労働省が2017年3月に公表した「転勤に関する雇用管理のヒントと手法」によれば、企業が、転勤に関する雇用管理を考える際は、まず異動の実態を把握し、自社にとって不可欠な転勤を見極め、雇用管理の類型ごとに取るべき運用を整理していく必要があるという。
◆企業にとってもコスト増となる不要な転勤を避け、労働者が転勤に伴う生活上の困難にできる限り直面しないような雇用管理を実現していくことが求められる。転勤制度の改革は、人々が中長期的な見通しを持った働き方と生活を両立するための大きな一歩になると考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
大介護時代における企業の両立支援
〜人的資本のテーマは「介護」にシフト〜『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
-
2025年度の健康経営の注目点
ISO 25554の発行を受け、PDCAの実施が一段と重視される
2024年12月24日
-
健康経営で高評価を得るポイント
政策の方向性を踏まえた対応と、データ活用による効果検証が必要
2024年09月20日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日