サマリー
◆政府は2017年3月に「働き方改革実行計画」を決定し、同一労働同一賃金の基本的な考え方と法改正の方向性を示した。非正規雇用者の待遇改善に向けて、非正規雇用者も賃金決定に関する労使の話し合いに含まれたことや、曖昧な評価や賃金決定になることを避けるための具体的なガイドラインについて議論が進んだことは、改革の大きなポイントである。
◆職務遂行能力を高めることができる人事制度の適用を受け、それに応じた賃金(職能給)が支払われているのは、基本的には正規雇用者である。そうした雇用慣行の中で、同一労働同一賃金の導入をどのように進めていくかが本質的な課題である。
◆しかしそれは、日本的雇用慣行の良さである人材育成や幅広い業務経験をさせる仕組みそのものを否定することではない。重要なことは、その雇用慣行の良さを維持しながら、様々な雇用形態の雇用者が公正な評価を受け、生産性を高めていけるよう、企業が職務内容や能力の評価基準を明確化・透明化していくことである。
◆人材育成の対象に非正規雇用者を含め、意欲や職務の内容に応じた処遇を行うことは、彼らの人的資本を高め、労働生産性の高い働き方の実現へとつながる。それは、企業側にとっても大きな貢献を期待できるものであり、換言すれば、企業がいかに非正規雇用の待遇改善を考えるかということは、企業の成長にも格差を生じさせ得る重要な課題だろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
-
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
-
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
-
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
-
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
中国経済:2023年の回顧と2024年の見通し
24年の成長率目標は5%か?達成の鍵は民営企業へのサポート強化
2023年12月21日
2024年の米国経済見通し
①個人消費の腰折れ、②インフレ率の高止まり、③政治の停滞がリスク
2023年12月21日
2024年度税制改正大綱解説
定額減税は経済対策としては疑問だが、インフレ調整策としては有効
2023年12月25日
四半期報告書の廃止に関する改正法の成立
四半期報告書が廃止された後の四半期決算短信の内容は?
2023年12月04日