サマリー
◆2018年4月以降、正社員増加ペースは加速する公算が大きい。それは、2013年4月施行の改正労働契約法が大きく関係している。本稿では、改正労働契約法における「無期転換ルール」と企業の対応についてまとめた。
◆改正労働契約法では、「有期労働契約が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できる」と定められた。ただし、その対象は2013年4月以後に開始する有期労働契約であるため、無期契約への本格移行は、その5年後の2018年4月以降である。
◆(独)労働政策研究・研修機構が2017年5月に発表したアンケートでは、「何らかの形で無期契約にしていく」と答えた企業が約60%となり、雇止めを想定している企業(約8%)を大きく上回った。さらに、無期転換ルールの本格適用が近づく中で、「5年」という期間にとらわれず、前倒しで無期転換を行う企業も約2割存在することが分かった。また、無期契約に転換すると答えた企業のうち、フルタイム労働者では、正社員に転換する企業(43%)が契約のみ無期にする企業(37%)を上回った。
◆まだ対応を決めていない企業も多く、不透明な部分はあるものの、特にフルタイム労働者に関しては、2018年4月以降に正社員に切り替える企業が比較的多く見られる可能性が高い。今後、「無期転換ルール」に後押しされて、非正規社員から正社員への転換が続けば、持続的に賃金も上昇する公算が大きい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
若者の奨学金返済の不安をどう解消するか
給付奨学金の拡充、貸与奨学金は有利子から無利子への流れを加速
2025年05月09日
-
大介護時代における企業の両立支援
〜人的資本のテーマは「介護」にシフト〜『大和総研調査季報』2025年春季号(Vol.58)掲載
2025年04月24日
-
2025年度の健康経営の注目点
ISO 25554の発行を受け、PDCAの実施が一段と重視される
2024年12月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
-
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日
日本経済見通し:2025年4月
足元の「トランプ関税」の動きを踏まえ、実質GDP見通しなどを改訂
2025年04月23日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
「反DEI」にいかに立ち向かうか
米国における「DEIバックラッシュ」の展開と日本企業への示唆
2025年05月13日
中国:関税115%引き下げ、後は厳しい交渉へ
追加関税による実質GDP押し下げ幅は2.91%→1.10%に縮小
2025年05月13日