サマリー
◆2020年9月22日に、OECD(経済協力開発機構)が導入を検討するデジタル課税の制度設計報告書案がリークされた。本報告書案は10月のOECDでの会合に向けた草稿であるが、2020年内の合意が目指されていることに鑑みると、策定が進められている制度設計の最終版と多くの部分で同一、もしくは類似していると考えられる。
◆デジタル課税が検討される背景として、ITの発展により現行の国際課税制度では対応しきれない問題が生じていることが挙げられる。GAFAに代表される多国籍企業グループは、市場国に物理的拠点を有していない場合、現行の国際課税制度では市場国で課税されない。この問題を改めようとするのが、「第1の柱」と呼ばれる枠組みである。
◆「第1の柱」を巡り、GAFA狙い撃ちは認めないという立場の米国と税収拡大を企図するEUの対立が激化している。OECD案では米国の主張も踏まえて、GAFAなどのITサービス(「自動化されたデジタルサービス」)に加え、ブランド品などの「消費者向け事業」もデジタル課税の対象とされている。一方で「消費者向け事業」の課税の詳細を見ると、多くの場合は納税額が0となり得る制度設計となっている。すなわち、課税対象の点からは、EUの主張を踏まえた制度設計が進んでいると評価できよう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2012~2024年の家計実質可処分所得の推計
2024年は実質賃金増と定額減税で実質可処分所得が増加
2025年04月11日
-
「103万円の壁」与党修正案の家計とマクロ経済への影響試算(第5版)
所得税の課税最低限を160万円まで引き上げる与党修正案を分析
2025年03月19日
-
平成以降の家計の税・社会保険料負担の推移
『大和総研調査季報』2025年新春号(Vol.57)掲載
2025年01月24日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
-
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
-
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
トランプ関税で日本経済は「漁夫の利」を得られるか?
広範な関税措置となっても代替需要の取り込みで悪影響が緩和
2025年03月03日
地方創生のカギとなる非製造業の生産性向上には何が必要か?
業種ごとの課題に応じたきめ細かい支援策の組み合わせが重要
2025年03月12日
中国:全人代2025・政府活動報告を読み解く
各種「特別」債で金融リスク低減と内需拡大を狙う
2025年03月06日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日