投資信託の外国税額控除の制度解説とファンドに及ぼす影響の試算

税引後リターンに年率0.1%~0.9%pt程度の差が生じる可能性も

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2019年06月12日

サマリー

◆2018年度税制改正により、2020年1月1日以後に支払われる配当等から、公募投資信託などを通じて外国資産に投資した場合についても外国税額控除の対象とする改正が行われ、2019年度税制改正により具体的な控除額の計算規定が整備された。本レポートでは個人投資家における投資信託の外国税額控除の制度解説を行い、ファンドに及ぼす影響について試算をもとに検討する。

◆外国株式や外国REITのみに投資する公募投資信託は、一般的に、年率0.1%~0.9%程度の外国税を負担していると考えられる。しかし、公募投資信託が負担する外国税額の全てが控除できるわけではない。本レポートの試算により、公募投資信託が負担した外国税のうち控除対象となりうる金額の割合は、100%となることもあれば20%以下となることもあるなど、ファンドの運用状況によって大きく異なることが分かった。

◆このため、税引前のパフォーマンスが全く同じ公募投資信託であったとしても、外国税額控除の制度要因によって、税引後のパフォーマンスに年率0.1%~0.9%pt程度の差が生じる可能性が考えられる。この差は、特に、外国株式や外国REITに投資するインデックスファンドにおいて無視できない差となることが考えられる。

◆従来、長期投資を行う場合、分配金の支払は課税のタイミングを早めてしまうため投資家にとって不利だと考えられていた。しかし、本レポートの試算により、外国税額控除の導入後は、ファンドが負担した外国税を分配金にかかる所得税から全額控除できる場合、分配金を払出す方が払出さないよりも投資家の税引後リターンが高くなる可能性が高いことが分かった。

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