サマリー
◆2018年度税制改正により、2020年1月1日以後に支払われる配当等から、公募投資信託などを通じて外国資産に投資した場合についても外国税額控除の対象とする改正が行われ、2019年度税制改正により具体的な控除額の計算規定が整備された。本レポートでは個人投資家における投資信託の外国税額控除の制度解説を行い、ファンドに及ぼす影響について試算をもとに検討する。
◆外国株式や外国REITのみに投資する公募投資信託は、一般的に、年率0.1%~0.9%程度の外国税を負担していると考えられる。しかし、公募投資信託が負担する外国税額の全てが控除できるわけではない。本レポートの試算により、公募投資信託が負担した外国税のうち控除対象となりうる金額の割合は、100%となることもあれば20%以下となることもあるなど、ファンドの運用状況によって大きく異なることが分かった。
◆このため、税引前のパフォーマンスが全く同じ公募投資信託であったとしても、外国税額控除の制度要因によって、税引後のパフォーマンスに年率0.1%~0.9%pt程度の差が生じる可能性が考えられる。この差は、特に、外国株式や外国REITに投資するインデックスファンドにおいて無視できない差となることが考えられる。
◆従来、長期投資を行う場合、分配金の支払は課税のタイミングを早めてしまうため投資家にとって不利だと考えられていた。しかし、本レポートの試算により、外国税額控除の導入後は、ファンドが負担した外国税を分配金にかかる所得税から全額控除できる場合、分配金を払出す方が払出さないよりも投資家の税引後リターンが高くなる可能性が高いことが分かった。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
金融庁、NISAのこども支援措置・投資商品入替措置などを要望
令和8年度税制改正要望—NISAの全世代化に向けた取組みが続く
2025年09月11日
-
道府県民税利子割への清算制度導入を提言
令和8年度税制改正での実現は不透明な情勢
2025年08月13日
最新のレポート・コラム
-
働く低所得者の負担を軽減する「社会保険料還付付き税額控除」の提案
追加財政負担なしで課税最低限(年収の壁)178万円達成も可能
2025年10月10日
-
ゼロクリックで完結する情報検索
AI検索サービスがもたらす情報発信戦略と収益モデルの新たな課題
2025年10月10日
-
「インパクトを考慮した投資」は「インパクト投資」か?
両者は別物だが、共にインパクトを生むことに変わりはない
2025年10月09日
-
一部の地域は企業関連で改善の兆し~物価高・海外動向・新政権の政策を注視
2025年10月 大和地域AI(地域愛)インデックス
2025年10月08日
-
政治不安が続くアジア新興国、脆弱な中間層に配慮した政策を
2025年10月10日
よく読まれているリサーチレポート
-
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
-
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
-
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
-
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第226回日本経済予測(改訂版)
低成長・物価高の日本が取るべき政策とは?①格差問題、②財政リスク、を検証
2025年09月08日
聖域なきスタンダード市場改革議論
上場維持基準などの見直しにも言及
2025年09月22日
今後の証券業界において求められる不正アクセス等防止策とは
金融庁と日本証券業協会がインターネット取引の新指針案を公表
2025年09月01日
日本経済見通し:2025年9月
トランプ関税で対米輸出が大幅減、製造業や賃上げ等への影響は?
2025年09月25日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日