証券金融税制の今後

~ 2011年度改正後の課題~『大和総研調査季報』 2011年春季号(Vol.2)掲載

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2011年05月02日

  • 吉井 一洋

サマリー

2011年度税制改正大綱・法案では、上場株式等の10%税率の適用期限が2年延長されることとなったが、その代わり、金融所得課税一体化に向けた損益通算の範囲拡大は見送られた。株式への投資を促進するためには、財政・ファイナンスの有識者の中では10%税率維持よりも、損益通算の範囲を拡大し税率を20%に引き上げる方が有効であるとの意見が定説となっているが、このような考えは個人投資家には浸透していないと思われる。また主要国の現実の税制を見ても、株式は利子などに比べて表面的な税負担は軽減されてきた。金融所得課税一体化を目指す場合でも、法人段階・個人段階を通じたトータルの税負担について、利子との間でバランスを確保するためには、配当や株式譲渡益に対する二重課税について何らかの調整を図る必要がある。一体化に備えた納税システムの導入も図る必要がある。

日本版ISAの導入は2年延長され、2014年からとなる予定だが、昨今は非課税年金貯蓄である日本版IRAが注目されている。国際課税では海外資産への対応や金融取引税などにも注目が必要である。最後に株式市場活性化策として株式相続税評価の軽減、自己株消却額損金算入を提案する。

大和総研調査季報 2024年新春号Vol.53

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