2016年02月25日
サマリー
◆目下、欧州の金融市場では、MiFID Ⅱの掲げる「投資家保護の強化」の一環として、リサーチ費用のアンバンドリング(分離明確化)が大きな関心事となっている。
◆MiFID Ⅱは、顧客との間の利益相反を防止すべく、投資会社による第三者のリサーチの購入を原則として禁止している。
◆もっとも、MiFID Ⅱの細則を策定する欧州委員会にその助言をする立場にある欧州証券市場監督局(ESMA)は、①投資会社の自己負担による購入、又は②投資会社の管理する“research payment account”を通じた購入の場合に限り、これを認める旨提案している(ESMA提案)。
◆上記②は、現在の慣行にならって顧客から預かる運用手数料に基づくリサーチの購入が可能である点は明確であるものの、ここ数年来欧米で普及しつつあるCSA(Commission Sharing Agreement)との親和性の有無が論点となっている。
◆英FCAによる解釈によれば、ブローカー手数料の範囲内でのリサーチの購入を前提としている現行のCSAは、ESMA提案の下では認められない。もっとも、最近の報道では、現行のCSAのままでも許容される可能性が指摘され始めている。
◆なお、MiFID ⅡはEUを拠点とする投資会社・ブローカーを対象とする規制であることから、欧州におけるリサーチ費用のアンバンドリングの規定が日本の投資会社・ブローカーに直接関係するケースは少ないものと思われる。
◆しかし、欧州、とりわけ英国における議論は、ゆくゆくはグローバル・スタンダードに影響を与える傾向があり、日本でも同様の議論が推し進められることになる可能性はあろう。
◆現に、「伊藤レポート」(2014年8月)では、リサーチ費用のアンバンドリングについて、「セルサイド・アナリストの企業評価能力の向上や短期志向化の改善に向けて、欧米で広がっているCSA(中略)も検討に値しよう」と言及している。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
開示府令の改正案が公表(2026年から一部適用)
有価証券報告書のサステナビリティ情報、人的資本、総会前開示に関する改正案
2025年12月10日
-
フィンフルエンサーの規制と取締りに関する海外動向
国境を越えた規制協力、フィンフルエンサー向け教育や認証制度の必要性
2025年11月19日
-
政策保有株式の縮減状況~2024年版~
保有銘柄数・保有額は前年比で2割程度の縮減
2025年11月11日
最新のレポート・コラム
-
中国:来年も消費拡大を最優先だが前途多難
さらに強化した積極的な財政政策・適度に緩和的な金融政策を継続
2025年12月12日
-
「責任ある積極財政」下で進む長期金利上昇・円安の背景と財政・金融政策への示唆
「低水準の政策金利見通し」「供給制約下での財政拡張」が円安促進
2025年12月11日
-
FOMC 3会合連続で0.25%の利下げを決定
2026年は合計0.25%ptの利下げ予想も、不確定要素は多い
2025年12月11日
-
大和のクリプトナビ No.5 2025年10月以降のビットコイン急落の背景
ピークから最大35%下落。相場を支えた主体の買い鈍化等が背景か
2025年12月10日
-
12月金融政策決定会合の注目点
2025年12月12日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
-
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
-
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日
日本経済見通し:2025年10月
高市・自維連立政権の下で経済成長は加速するか
2025年10月22日
非財務情報と企業価値の連関をいかに示すか
定量分析の事例調査で明らかになった課題と今後の期待
2025年11月20日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
第227回日本経済予測
高市新政権が掲げる「強い経済」、実現の鍵は?①実質賃金引き上げ、②給付付き税額控除の在り方、を検証
2025年11月21日
グラス・ルイスの議決権行使助言が大変化
標準的な助言基準を廃し、顧客ごとのカスタマイズを徹底
2025年10月31日

