監査制度の見直し

~監査報告書の透明化を中心に~『大和総研調査季報』 2017 年秋季号(Vol.28)掲載

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2017年12月01日

  • 吉井 一洋

サマリー

平成29(2017)年6月に金融庁は「監査報告書の透明化」という文書を公表し、これを受けて企業会計審議会は監査部会において当該テーマについての検討を開始する。従来、財務諸表の重要な虚偽表示の有無(適正か否か)のみを記載していた監査報告書に、会計監査人が監査を実施する過程で特に重要と考えた事項(KAM)を記載するというのが主な内容である。IAASB(国際監査・保証基準審議会)が設定するISA(国際監査基準)で基準が定められた他、米国などでも導入が決定し、英国やEUでは導入が開始している。財務諸表利用者(機関投資家やアナリスト)はKAMを取材やエンゲージメントの素材とすると思われる。KAMを有効に活用するためには、企業自身の関連項目の開示の充実が望まれる。またKAMは、統治責任者(監査役等)と対話をした項目から選択されるので、今後、監査役等の役割の重要性が高まることが予想される。監査制度の見直しに関するテーマとして、監査法人のガバナンスやローテーション制度、不正への対応などもあるが、IAASBではさらに監査の品質向上に向けた検討を開始しており、わが国も周回遅れにならないよう、資本市場関係者の迅速かつ的確な対応が求められるところである。


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