サマリー
平成29(2017)年6月に金融庁は「監査報告書の透明化」という文書を公表し、これを受けて企業会計審議会は監査部会において当該テーマについての検討を開始する。従来、財務諸表の重要な虚偽表示の有無(適正か否か)のみを記載していた監査報告書に、会計監査人が監査を実施する過程で特に重要と考えた事項(KAM)を記載するというのが主な内容である。IAASB(国際監査・保証基準審議会)が設定するISA(国際監査基準)で基準が定められた他、米国などでも導入が決定し、英国やEUでは導入が開始している。財務諸表利用者(機関投資家やアナリスト)はKAMを取材やエンゲージメントの素材とすると思われる。KAMを有効に活用するためには、企業自身の関連項目の開示の充実が望まれる。またKAMは、統治責任者(監査役等)と対話をした項目から選択されるので、今後、監査役等の役割の重要性が高まることが予想される。監査制度の見直しに関するテーマとして、監査法人のガバナンスやローテーション制度、不正への対応などもあるが、IAASBではさらに監査の品質向上に向けた検討を開始しており、わが国も周回遅れにならないよう、資本市場関係者の迅速かつ的確な対応が求められるところである。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
同じカテゴリの最新レポート
-
2022年以降の制度改正予定(企業会計編)
2022年02月09日
-
投資信託の時価算定の取扱いが明らかに
「時価の算定に関する会計基準の適用指針」の改正
2021年09月15日
-
2021年以降の制度改正予定(企業会計編)
2021年02月10日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日