サマリー
◆2022年5月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+39.0万人となり、市場予想を上回った。失業率も2ヵ月連続で横ばいとなったが、こちらもコロナ禍前の水準に肉薄するほどの低水準であり、低下余地が少ないことを踏まえれば申し分ない。また、非労働力人口が減少(=労働市場へ参入増)したことは、労働需給がタイトな中でポジティブな結果といえる。賃金上昇率は依然高水準にあるものの、小幅に鈍化しており、労働需給のタイトさが緩和されつつある兆しも見受けられる。
◆雇用環境の先行きについては、労働需要・供給ともに緩やかにペースダウンしていくと見込む。労働供給に関して、高齢層は労働参加率で見た場合に拡大余地があり、人口規模も相対的に大きい。しかし、高齢層も新型コロナウイルスの感染状況の改善による労働市場への再参入は進んでおり、労働供給を更に押し上げるような要因にはなりにくい。労働需要に関しては、企業マインドにおける雇用関連の指標は緩やかな低下傾向にある。企業マインドに歩調を合わせる形で、求人件数も徐々にピークアウトしていくことが想定される。
◆金融政策運営に関して、今回の雇用統計の堅調な結果は、当面のFOMCにおいて0.50%ptの利上げをサポートする材料となることが示唆される。現時点では、インフレ対策として、少なくとも6、7月のFOMCでの0.50%ptの利上げが予想されている。これまでの雇用統計の結果を踏まえれば、6月のFOMCでの0.50%ptの利上げは既定路線であろう。また、FOMCの政策判断は、1回の経済指標の結果に左右されないとされる。5月分の雇用統計のヘッドラインが堅調であった以上、たとえ6月分の雇用統計(7月8日公表予定)が冴えない結果となっても、7月のFOMCでの0.50%ptの利上げについても障害にはならないだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日