サマリー
◆2021年4月の雇用統計では、非農業部門雇用者数が前月差+26.6万人と市場予想を大幅に下回るネガティブサプライズとなった。レジャー・娯楽を除いて主要な業種で雇用者数が減少したことや過去分も下方修正されたことなどを踏まえれば、一層冴えなく映る。
◆雇用者数が伸び悩んだ要因として、供給制約が挙げられる。経済対策によって職探しを再開するインセンティブが低下したこと、オンライン授業と対面授業が併存する中で子育て世代の職場復帰が遅れていること、感染懸念から高齢層のリタイアが進んでいること、そして、長期失業によるスキルの陳腐化が雇用のミスマッチを発生させることなどの要因が考えられる。
◆供給制約要因のうち、リタイアした高齢層が再び労働参加の意欲を高めることは楽観しにくい。また、企業の採用意欲が高いとはいえ、スキル等のミスマッチが存在すれば、長期失業の解消も緩やかなものにならざるを得ない。当面は、好景気が雇用環境の回復を促すも、供給制約が雇用者数の伸びを抑制するという構図が継続する可能性があるだろう。
◆今回の雇用統計は、FOMC参加者にとって物足りない結果であったと考えられる。もし5月の雇用統計(6月4日公表予定)も冴えない結果となれば、FOMC参加者は雇用環境の回復が容易ならざるものと認識し、テーパリング議論を先送りするスタンスを強めると考えられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
ソフトウェア投資の拡大は今後も続くのか
求められるIT人材の育成、中小企業への支援、行政のデジタル化
2024年04月25日
-
中国経済見通し:名目<実質、実感なき景気堅調
不動産不況に一段の長期化の懸念
2024年04月25日
-
生成AIが描く日本の職業の明暗とその対応策
~AIと職業情報を活用した独自のビッグデータ分析~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
大手生保は中長期の事業環境の変化に対応できるか
~本格化するビジネスモデル変革~『大和総研調査季報』2024年春季号(Vol.54)掲載
2024年04月25日
-
複眼的思考へのヒント
2024年04月24日
よく読まれているリサーチレポート
-
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
-
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
-
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
-
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
-
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日
日本経済見通し:2024年2月
2025年度にかけて1%前後のプラス成長と2%インフレを見込む
2024年02月22日
ビットコイン現物ETF、日本で組成可能か?
米SEC承認を受けて、日本で導入することの法制度上の是非を考察
2024年02月13日
第220回日本経済予測(改訂版)
賃上げの持続力と金融政策正常化の行方①自然利子率の引き上げ、②投資と実質賃金の好循環、を検証
2024年03月11日
日本経済見通し:2024年3月
24年の春闘賃上げ率5%超えを受け、日銀はマイナス金利政策を解除
2024年03月22日
2024年の日本経済見通し
緩やかな景気回復と金融政策の転換を見込むも海外経済リスクに注意
2023年12月21日