サマリー
◆2019年10月29・30日に開催されたFOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利であるFF(フェデラルファンド)レートの誘導目標レンジを、従来の1.75-2.00%から0.25%pt引き下げ、1.50-1.75%にすることが決定された。7月・9月のFOMCに引き続き、年内3回目の利下げの実施となる。
◆今回のFOMCで最も注目されていたのは、12月のFOMC以降での更なる利下げ可能性をどの程度示唆するか、であった。今回のFOMCの声明文では、経済の現状認識は据え置かれた一方、フォワードガイダンスにおいて保険的利下げのシグナルであった「適切に行動する」という文言が削除された。声明文に基づけば、保険的利下げは年間累計0.75%ptでひとまず休止というFRBの意思表明と解釈すべきだろう。
◆他方で、パウエルFRB議長による記者会見では、「我々の見通しを変更させる事態が発生した場合には、状況に応じて対応する。金融政策にあらかじめ決まった道筋はない。」という表現が付け加えられた。保険的利下げの休止を声明文では示唆しつつも、記者会見ではマーケット参加者が過度に反応しないよう配慮したものと考えられる。
◆今後の金融政策運営に関して、足元の経済状況を踏まえれば、12月のFOMCで利下げが実施される蓋然性は低いと考える。しかし、FRBの見通しを変更させ得るトリガーは、米中関係など枚挙にいとまがない。今後も不確実性が高まるたびに、FRBは経済見通しを変更させ得るトリガーとして捉えるか否かを問われ続けることになるだろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
FOMC 様子見姿勢を強調
景気・インフレに加え、金融環境の変化が利下げのタイミングを左右
2025年05月08日
-
非農業部門雇用者数は前月差+17.7万人
2025年4月米雇用統計:景気への不安が高まる中で底堅い結果
2025年05月07日
-
米GDP 前期比年率▲0.3%とマイナスに転換
2025年1-3月期米GDP:追加関税を背景とした駆け込み輸入が下押し
2025年05月01日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
-
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
-
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
-
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
-
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日
「相互関税」による日本の実質GDPへの影響は最大で▲1.8%
日本に対する相互関税率は24%と想定外に高い水準
2025年04月03日
「相互関税」を受け、日米欧中の経済見通しを下方修正
2025年の実質GDP成長率見通しを0.4~0.6%pt引き下げ
2025年04月04日
米国による25%の自動車関税引き上げが日本経済に与える影響
日本の実質GDPを0.36%押し下げる可能性
2025年03月27日
2025年の日本経済見通し
1%台半ばのプラス成長を見込むも「トランプ2.0」で不確実性大きい
2024年12月20日
日本経済見通し:2025年3月
トランプ関税で不確実性高まる中、25年の春闘賃上げ率は前年超えへ
2025年03月24日