サマリー
◆歴史を振り返ってみると、Fedの金融政策の変更は、世界経済とグローバルな金融市場に対して多大な影響を及ぼしてきた。具体的な経路としては、①金融市場ルート、②実体経済ルート、の2つが重要となる。本稿では、「世界経済サイクル」の海図を基に、世界経済が現在置かれている状況を確認し、Fedの金融政策と世界経済の先行きについて考察を行う。
◆Fedの「出口戦略」を背景として、ドル高と新興国からの資金流出が加速し、その結果、新興国経済が減速している。加えて、新興国経済の減速が資源安に拍車をかけており、資源国リスクが高まっている。これらに関しては、①Fedの利上げペース、②新興国の景気刺激策、③資源価格の動向、を引き続き慎重に見極めたい。
◆現在、米国では、ドル高や原油安を主因に企業部門に弱さが見られていることが大きな特徴として指摘できる。企業部門とは対照的に米国では家計部門が好調であり、その背景として雇用環境の改善が挙げられる。ここで問題となるのは、企業部門の不振が、雇用の伸び悩みなどの形で家計部門に波及して、それが家計の期待インフレ率や実際の消費者物価上昇率の重石になるリスクをどう評価すべきか、という点である。
◆FOMC参加者は2015年12月時点で年4回程度の利上げを見込んでいたが、2016年3月に年2回程度まで利上げペースを引き下げた。このペースであれば、テイラー・ルールの先行きと大きくかい離せず、米国経済を過度に下押しすることもないだろう。この結果、世界経済も深刻な景気後退に陥らず、「ソフトパッチ(短期的な鈍化)」に留まる公算である。
◆日本銀行が2006年7月に利上げ(実質0%→0.25%)に踏み切った経験からの教訓として、「金利の水準論」に注意したい。政策金利の水準はその高低でなく、実体経済や物価水準との見合いで決められるべきである。さらに、複数の主要先進国がマイナス金利政策を導入した現在となっては、仮に政策金利が0%だとしても下へのバッファーが依然として存在することを忘れてはならない。
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