アメリカの住宅市場にはボトルネックが3つ

住宅市場の改善を見込むも、本格改善にはボトルネックの解消が必要

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2012年03月21日

  • 笠原 滝平

サマリー

◆アメリカ経済の行方は70%を占める消費の動向が重要だと考えている。特に、消費の約2/3を占めるサービス消費は、前回の景気拡大期の前年比平均が+2.3%なのに対し、今回の景気拡大期前年比平均は+0.7%、直近の1月も+1.2%と、依然として前回の景気拡大期の伸びより低い。これは、最もシェアの大きい住宅関連サービスが軟調であることが原因の一つだ。また、消費に影響を与える住宅価格も低迷が続いている。直近のデータでは住宅市場に改善の兆しがみられるが、住宅市場はこのまま改善の傾向が続くのであろうか。

◆需要側(住宅購入者)の状況は足下で幾分改善している。今後も所得の改善に伴って状況はより良くなる見込みである。また、住宅ローンの需要も悪化に歯止めがかかりつつある。

◆供給側の状況を確認すると、銀行などの資金供給者の貸出態度は厳格化に歯止めがかかっている。また、建設業者のマインドも改善傾向にあり、足下の状況は僅かながら良好と言えるだろう。しかし、(1)商業銀行の貸出残高は微増しているものの全体の住宅ローン貸出残高は減少が続いている。また、(2)主要商業銀行の貸出態度は厳格化に歯止めがかかっているだけで大幅に軟化しているわけではない。更に、(3)新規住宅差し押さえ人数は依然として高水準にある。これら3つのボトルネックの解消が、今後の住宅市場改善には欠かせないだろう。

◆新規住宅差し押さえ人数の減少のため、アメリカ政府はHARP(Home Affordable Refinance Program)やHAMP(Home Affordable Modification Program)などの政策を打ち出してきたが、想定ほど利用者が増えていない。そのため、対象者の拡大や期間の延長などの政策の拡充が図られている。

◆今後の住宅市場は緩やかながら改善すると見込んでいる。ただし、供給側には3つのボトルネックが挙げられる。ボトルネックの解消に向けてHARP やHAMP などの政策による複合的な底上げ効果に期待したい。

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