サマリー
◆ウクライナ情勢の緊迫化による市況面からの日本経済への主な影響としては、資源高による交易条件の悪化と、株価下落に伴う負の資産効果(いわゆる逆資産効果)の2つが挙げられる。資源高による悪影響は、経済対策の給付対象とならなかった低所得世帯を中心に表れるとみられる。日本の逆資産効果は比較的小さいとみられるものの、新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着いた後の個人消費の回復を抑制する可能性がある。
◆対ロシア取引額は輸出総額の1.0%、輸入総額の1.8%とわずかである(2021年)。直接投資残高では0.1%(2020年)、与信残高では0.2%(2021年9月末)にすぎない。もっとも、エネルギーや金属などの中にはロシアへの依存度の高い輸入品がある。対ロ貿易が滞れば、国内価格の上昇を通じて企業収益や家計を圧迫したり、基幹産業のサプライチェーン全体に影響が波及したりすることも考えられる。
◆エネルギー価格、対ロシア貿易、株価について3つのシナリオを作成し、日米欧(ユーロ圏)中の2022、23年の実質GDP成長率見通しを比較すると、ロシアとの経済的な結びつきが強い欧州の経済見通しの下振れ幅が最も大きい。全ての国・地域において悲観シナリオでもプラス成長を維持する見込みだが、感染拡大の長期化で経済見通しが更に下振れする可能性がある。また、ロシアと西側諸国が武力衝突し、核兵器の使用や第三次世界大戦の勃発といった最悪の事態に発展するリスクがあることは否定できない。
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