日本経済見通し:2021年9月

今秋から経済正常化が進展か/菅政権の振り返りと次期政権の課題

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2021年09月21日

  • 経済調査部 シニアエコノミスト 神田 慶司
  • 経済調査部 エコノミスト 小林 若葉
  • 経済調査部 エコノミスト 中村 華奈子

サマリー

◆新型コロナウイルス感染症の拡大は落ち着きつつあり、緊急事態宣言は9月30日をもって解除される可能性が高まった。7月12日から9月30日までの緊急事態宣言などによる経済損失は0.7兆円程度とみられ、7-9月期の個人消費は小幅な落ち込みにとどまるだろう。10-12月期はワクチンの普及もあって経済活動の正常化が進み、実質GDP成長率が加速する姿を見込んでいる。

◆菅義偉首相は9月29日に行われる自由民主党総裁選挙に立候補しない意向を表明した。感染拡大以降、日本は諸外国に比べ新型コロナによる経済損失も死者数も抑えられた。大規模で迅速な経済対策が実施されたこともあり、戦後最悪のマイナス成長下でも連鎖倒産や大規模な雇用調整を回避した点も評価される。菅政権はとりわけ「グリーン」「デジタル」の分野で政策を大きく前進させたが、これらの実現は次期政権の課題として残った。コロナ対策では「緊急事態」が常態化するなど政権の推進力低下の原因になった。

◆自民党総裁選に立候補した河野氏、岸田氏、高市氏、野田氏(届け出順)はいずれも、2050年のカーボンニュートラルを目指す考えを示している。デジタル化の推進ではとりわけ河野氏と岸田氏が積極的に取り組むだろう。高市氏は財政健全化目標を凍結して財政出動を優先する考えだが、こうした投資で実際に成長が強化されるかは不確実性が大きい。経済成長だけでは財政・社会保障の持続可能性を確保できず、大幅な社会保障制度改革が求められる。野田氏が最も重視する少子化対策は待ったなしだが、EBPMの観点から出生率の引き上げに有効な施策について検討する必要がある。

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