日本経済見通し:2017年の消費増税に向けた論点整理

海外発の日本経済下振れリスクが継続

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2016年04月20日

  • 調査本部 副理事長 兼 専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸
  • 金融調査部 主任研究員 長内 智
  • 岡本 佳佑
  • 小林 俊介
  • 経済調査部 シニアエコノミスト 久後 翔太郎
  • 永井 寛之

サマリー

海外発で景気下振れリスクが強まる:足下の日本経済は踊り場局面が継続しているものの、先行きに関しては、①在庫調整の進展、②原油安、③実質賃金の増加、④補正予算の編成、などの国内要因が下支え役となり、緩やかに回復する見通しである。ただし、中国を中心とする海外経済の下振れリスクには細心の注意が必要となろう(→詳細は、熊谷亮丸他「第188回 日本経済予測(改訂版)」(2016年3月8日)参照)。


日本経済のリスク要因:日本経済のリスク要因としては、①中国経済の下振れ、②米国の出口戦略に伴う新興国市場の動揺、③地政学的リスクを背景とする世界的な株安、④ユーロ圏経済の悪化、の4点に留意が必要である。当社の中国に対する見方は「短期=楽観。中長期=悲観」である。中国経済を取り巻く状況を極めて単純化すれば、「1,000兆円以上の過剰融資」「400兆円以上の過剰資本ストック」に対して、中国政府が600兆~800兆円規模の財政資金で立ち向かう、という構図だ。中国経済の底割れは当面回避されるとみているが、中長期的なタイムスパンでは大規模な資本ストック調整が発生するリスクを警戒すべきであろう。


2017年の消費増税に向けた論点整理:今回のレポートでは、2017年の消費増税に向けた論点を整理した。2014年の消費増税後の耐久財消費の戻りの鈍さには、過去の経済対策による需要先食いの反動が影響している。また、所得の見通しの弱さが「嗜好サービス」を中心とする、サービス消費に大きく影響したとみられる。こうした状況を勘案したうえで、2017年の消費増税の影響を試算すると、実質GDPは増税がない場合と比較して、2016年度=+0.3%、2017年度=▲0.6%程度の影響を与える計算となる。また、軽減税率導入による個人消費の下支え効果は約1.1兆円(2017年度)と試算される。

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