サマリー
◆経済見通しを大幅に下方修正:2012年7-9月期GDP一次速報を受け、2012-13年度の成長率見通しを大幅に下方修正した。改訂後の実質GDP予想は2012年度が前年度比+0.7%(前回:同+1.8%)、2013年度が同+0.9%(同:同+1.2%)である(→詳細は、熊谷亮丸他「第175回 日本経済予測」(2012年11月15日)参照)。
◆景気はどこから立ち上がる?:日本経済は海外経済の悪化などを背景に、2012年3月を「山」に景気後退局面入りした可能性が濃厚である。今回のレポートでは過去の日本経済の回復局面を検証することなどを通じて、今後の日本経済回復の条件を探った。過去の日本経済の回復局面を検証すると、1990年代以降、景気回復のドライバーが「財政・金融政策」から「輸出」へと明確に変化していることが確認できる。今後の景気後退局面でも、海外経済の回復などによる輸出の増加が日本経済底入れの発火点となる可能性が高いだろう。今後の日本経済は、様々な景気下振れリスクを抱えつつも、メインシナリオとして、[1]米国・中国経済の持ち直し、[2]震災発生に伴う「復興需要」、[3]日銀の追加金融緩和、という「三本の矢」に支えられて、2013年以降、緩やかな回復軌道を辿る公算である。
◆今後の世界経済をどう見るか?:今後の世界経済を展望する上で鍵になるのは、欧米など先進国の内需低迷を、新興国の政策発動でどの程度相殺できるか、という点である。当社は今後の世界経済に関して、[1]先進国の内需、[2]新興国の政策発動、を外生変数とする定量的なシミュレーションを行った。結論として、新興国が積極的な財政・金融政策の発動を実施すれば、先進国の内需低迷をある程度相殺することは可能だと見られる。ただし、「欧州ソブリン危機」の深刻化、米国の「財政の崖」、など複数のリスク要因が同時に起きるケースでは、新興国の政策発動のみで世界経済を支えるには力不足であると考えられる。
◆日本経済のリスク要因:今後の日本経済のリスク要因としては、[1]「欧州ソブリン危機」の深刻化、[2]日中関係の悪化、[3]米国の「財政の崖」、[4]地政学的リスクなどを背景とする原油価格の高騰、[5]円高の進行、の5点に留意が必要である。
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