日本経済見通し:日本銀行が抱える3つの課題

日本経済は「三本の矢」に支えられて拡大が続くが、4つのリスクに要注意

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2012年04月19日

  • 調査本部 副理事長 兼 専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸

サマリー

日本銀行が抱える3つの課題:最近、政府・与党や野党による「日銀包囲網」が強まっている。筆者は、わが国でデフレが継続してきた一因は日銀の金融緩和が不十分であったことにあると見ており、追加的な金融緩和の必要性を折に触れて主張してきた。今後、日本銀行は3つの課題への対応を迫られると考えられる。

日本経済のメインシナリオ:今後の日本経済は、メインシナリオとして、(1)東日本大震災発生に伴う「復興需要」、(2)米国を中心とする海外経済の持ち直し、(3)日銀の事実上の「インフレ目標」導入を受けた円安の進行、という「3本の矢」に支えられて、緩やかな景気拡大が続く見通しである。

リスク要因:日本経済のリスク要因としては、(1)「欧州ソブリン危機」の深刻化、(2)地政学的リスクを背景とする原油価格の高騰、(3)円高の進行、(4)原発停止に伴う生産の低迷、の4点に留意が必要である。今回のレポートでは紙幅の関係もあり、特に重要性が高い上記(1)と(2)についてのみ、詳細な分析を行うこととしたい。第一に、欧州諸国の国債のヘアカット率に関する3つのシナリオを設定した上で、日本経済に与える影響を算定したところ、最悪のケースでは、わが国の実質GDPは4%以上押し下げられる可能性がある。今後の「欧州ソブリン危機」の展開次第では、日本経済が「リーマン・ショック」並の打撃を受ける可能性が皆無ではない。第二に、イラン情勢緊迫化などを背景に原油価格が高騰した場合、日本企業の交易条件悪化などを通じて、日本経済が「ミニ・スタグフレーション(不況下の物価高)」に陥るリスクがある。

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