日本経済見通し:(1)欧州危機、(2)円高、(3)原発停止の影響を検証

「復興需要」に支えられて拡大する見通しだが、3つの下振れリスクに要注意

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2012年01月20日

  • 調査本部 副理事長 兼 専務取締役 調査本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸

サマリー

日本経済のメインシナリオ:今後の日本経済は、メインシナリオとして、東日本大震災発生に伴う「復興需要」に支えられて緩やかな景気拡大が続く見通しだ。当社の実質GDP予想は2011年度が前年度比▲0.3%、2012年度が同+1.8%である。当社の試算では、復興関連予算は、2012年度の実質GDPを1%弱押し上げることが期待される。さらに、「資本ストック循環」などの面から見て、設備投資関連指標に回復の兆しが生じていることも、日本経済を下支えする要因となろう。

日本経済の3つのリスク要因を検証:今回のレポートでは、日本経済の3つのリスク要因(=(1)「欧州ソブリン危機」の深刻化、(2)円高の進行、(3)原発停止に伴う生産の低迷)について検証した。第一に、上記(1)~(3)の中で、最大のテールリスクが「(1)『欧州ソブリン危機』の深刻化」であることは言うまでもない。当社は、欧州諸国の国債のヘアカット率に関する3つのシナリオを設定した上で、日本経済に与える影響を算定した。シミュレーション結果によれば、最悪のケースでは、わが国の実質GDPは4%以上押し下げられる可能性がある。試算結果については、相当程度の幅を持って見る必要があることは言うまでもないが、今後の「欧州ソブリン危機」の展開次第では、日本経済が「リーマン・ショック」並の打撃を受けるリスクが生じよう。さらに、「欧州ソブリン危機」が深刻化すると、グローバルなマネーフローが「逆流」し、アジアを中心とする「新興国」の株価が暴落する可能性もある。第二に、2012年のドル円相場は、75~80円前後の比較的狭いレンジ内で、年前半は円高・ドル安、年後半は円安・ドル高気味に推移しよう。米国で大統領選挙が実施される年は、ドル円相場のボラティリティが低下する傾向がある。第三に、仮に、わが国で全ての原発が停止した場合、実質GDPに対しては1%以上の低下圧力がかかる可能性があり要注意だ。

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