サマリー
◆中長期的に見れば、世界経済の潮流は「インフレ」へ:今回のレポートでは、世界経済の中長期的な方向性について考察した上で、わが国がとるべき政策対応を指摘したい。筆者は、2011年9月に、東洋経済新報社から『世界インフレ襲来』という単行本を刊行した。筆者は、世界的な「デフレ」進行を警戒する世間一般の見方に反して、向こう3~5年程度の中長期的なタイムスパンで見れば、世界経済の潮流は「インフレ」に向かうと予想している。過去100年間程度の「金融危機」の歴史を検証すると、「(1)金融危機→(2)財政危機→(3)インフレ進行」というパターンが抽出できる。現在の世界的な経済環境を歴史的な観点から位置づけると、「金融危機」の第二ステップである「財政危機」から、米連銀による量的緩和政策第3弾(いわゆる“QE3”)の導入などを経て、第三ステップの「インフレ進行」へと移行する過渡期にあると考えられる。
◆日本経済の3つのリスク要因:世界経済の潮流が「インフレ」へと向かうなか、わが国では、(1)東日本大震災の発生、(2)高齢化に伴う民間貯蓄の取り崩し、(3)財政赤字の拡大、(4)これらの結果としての経常黒字の縮小、などの要因もあり、中長期的に金融市場の混乱が懸念される。かかる状況下で、日本政府は、以下の2つの政策対応を講ずるべきだ。第一に、今回の震災は、リーマン・ショックの様な「需要ショック」ではなく、「供給ショック」の側面が強い。今後、政府は電力不足の解消を中心とする「供給サイド」の政策を従来以上に重視すべきだ。さらに、中長期的な課題である、規制緩和、法人税減税、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加などの「供給サイド」の政策も、着実に実行する必要がある。第二に、今回の震災の様な「供給ショック」が起きた際に最も警戒すべきは、「クラウディングアウト(大量の国債発行により金利が上昇し、民間の経済活動が抑制されてしまうこと)」の発生である。長期金利の上昇を防ぐ意味で、日本政府の「財政規律維持」に向けたコミットメントが不可欠だ。日本政府は、中長期的に世界経済の潮流が「インフレ」へと向かうリスクを認識した上で、「供給サイド」の政策と「財政規律維持」を2本柱に据えた、適切な政策対応を講じる必要がある。
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