日本経済見通し:外部環境とリスク要因を検証する

2012年にかけてグローバルな「政治的ビジネスサイクル」が好転

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2011年07月20日

  • リサーチ本部 副理事長 兼 専務取締役 リサーチ本部長 チーフエコノミスト 熊谷 亮丸

サマリー

◆日本経済は、2011年度下期以降、復興需要に支えられて回復へ:当社は、2011年1-3月期GDP二次速報を受け、2011-12年度の成長率見通しを改訂した。改訂後の実質GDP予想は2011年度が前年度比▲0.3%(前回予想:同▲0.3%)、2012年度が同+3.4%(同:同+3.4%)である。日本経済は、当面下振れ圧力の強い状態が続くものの、2011年度下期以降は、復興需要に支えられて回復軌道を辿る見通しだ。

◆日本経済を取り巻く外部環境とリスク要因:今回のレポートでは、日本経済を取り巻く外部環境とリスク要因を検証した。当社は、2012年にかけてグローバルな「政治的ビジネスサイクル」の好転が見込まれること等が好材料であると考えている。他方で、リスク要因としては、「地政学的リスク」を背景に原油価格が急騰した場合、日本経済が「スタグフレーション(不況下の物価高)」に陥る可能性が挙げられよう。

◆東日本大震災後の日本経済の構造変化と今後の政策課題:東日本大震災の発生を受け、日本経済を取り巻く環境は、(1)財政赤字の拡大、(2)経常黒字の縮小、(3)「円高」から「円安」、(4)「デフレ」から「インフレ(若しくは『スタグフレーション』)」、(5)長期金利は「低下」から「上昇」、という5つの構造変化を起こす可能性がある。今回の震災の様な「供給ショック」が起きた際に最も警戒すべきは、「クラウディングアウト(大量の国債発行により金利が上昇し、民間の経済活動が抑制されてしまうこと)」の発生である。今後、政策面では、(1)経済の「供給サイド」の政策(電力不足問題の解決、規制緩和、法人税減税、環太平洋経済連携協定への参加等)と、(2)「財政規律」の維持が、従来以上に重要となろう。

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