サマリー
グローバル・サプライチェーン(GSC)が複雑化する中で、米国の関税政策による世界経済への影響などの不透明感が増している。本稿では日本を取り巻くGSCを俯瞰することで、こうした経済ショックが日本に波及する経路や、日本の対外進出における課題について検討する。
日本から見た75カ国・地域の経済的機能をマクロ統計で評価し、GSCを整理したところ、日本の「生産拠点」や「市場」は先進国やアジア圏に、「流通拠点」は税制優遇が手厚い導管国に、「サプライヤー」は環太平洋地域に集中する傾向が見て取れた。同時に、日本は多くの「友好国」の経済的機能を活用できていないことが分かった。経済効率性を追求する過程で「友好国」への事業展開が遅れ、GSCの安定性が損なわれてきたことが示唆される。
日本のサプライチェーンのリスク耐性を「平均波及工程数(APL)」(GSCの長さの指標)や「世界不確実性指数」によって評価したところ、日本はGSC上の調達面、販売面ともに不安定性が大きいことが分かった。サプライチェーンの一部を国内に回帰させたり、欧州を中心とした「友好国」をGSCに組み込んだりすることが今後の課題といえよう。
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