サマリー
グローバル・サプライチェーン(GSC)が複雑化する中で、米国の関税政策による世界経済への影響などの不透明感が増している。本稿では日本を取り巻くGSCを俯瞰することで、こうした経済ショックが日本に波及する経路や、日本の対外進出における課題について検討する。
日本から見た75カ国・地域の経済的機能をマクロ統計で評価し、GSCを整理したところ、日本の「生産拠点」や「市場」は先進国やアジア圏に、「流通拠点」は税制優遇が手厚い導管国に、「サプライヤー」は環太平洋地域に集中する傾向が見て取れた。同時に、日本は多くの「友好国」の経済的機能を活用できていないことが分かった。経済効率性を追求する過程で「友好国」への事業展開が遅れ、GSCの安定性が損なわれてきたことが示唆される。
日本のサプライチェーンのリスク耐性を「平均波及工程数(APL)」(GSCの長さの指標)や「世界不確実性指数」によって評価したところ、日本はGSC上の調達面、販売面ともに不安定性が大きいことが分かった。サプライチェーンの一部を国内に回帰させたり、欧州を中心とした「友好国」をGSCに組み込んだりすることが今後の課題といえよう。
大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年7月機械受注
金融業・保険業、不動産業などの受注減で軟調な結果
2025年09月18日
-
2025年8月貿易統計
トランプ関税や半導体需要減の影響継続で輸出金額は4カ月連続減少
2025年09月17日
-
トランプ関税でインバウンドに黄色信号
中国人旅行客の伸びしろは大きいものの、他国の状況は厳しい
2025年09月16日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日