サマリー
◆ビジネスにおけるデータ利活用の重要性が叫ばれているものの、DXが実現している企業はあまり多いとは言えない。なぜならば、データの連携や分析が効率的に行えるようなデータ整備や連携基盤の構築が求められるだけでなく、ビジネスにおいて何を決定/判断するためにデータを利用するのかという「目的」も明確にする必要があるからだ。
◆データ利活用の実現に向けては、業務効率化とDX推進の2つのアプローチがあるが、DXはビジネスモデルの変革を伴うトップダウンのアプローチ、業務効率化は既存の業務プロセスの効率化を検討するボトムアップのアプローチであり、両者は似ているようで異なる。初期段階で、企業全体においてデータ利活用を検討することは困難であり、業務効率化からデータ利活用を始める企業は少なくない。しかし、両者のアプローチの違いから、業務効率化の取り組みが必ずしもDXの成果に繋がるとは限らない。
◆データ利活用の「目的」は、①経営管理レベルの向上、②新事業の企画/創出および付加価値の向上、③生産性の向上、④品質向上、⑤集客効果の向上等が挙げられる。こうしたデータ利活用における「目的」から逆算して、利用する「データ」を明確化する必要がある。しかし、この作業には普段無意識に行われる行動を意識化(言語化)していく必要があり、そのハードルは高い。そのため、業務効率化やDX推進を行う際には、しばしば分かりやすい技術面が先行しがちである。手段(技術)が目的となっていないか、常に注意を払う必要もあるだろう。
◆企業におけるデータ利活用の「目的」を果たすためには、企業全体でデータを利活用できるように整備を行うことも必要だ。大前提として、データ自体を連携が容易な形に整備することが重要になる。次回のレポートでは、政府におけるデータ整備の取り組みを手掛かりに、DXを実現させるための企業におけるデータの在り方について議論していく。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
執筆者のおすすめレポート
-
DFFT実現の決め手はデジタル技術?
自由なデータ流通における信頼・信用はデジタル技術が鍵となる
2024年09月12日
-
日本はデータ戦略で主導権が取れるのか?
技術等でデータ流通における信用・信頼を確保できればチャンスあり
2024年10月29日
同じカテゴリの最新レポート
-
経済指標の要点(8/19~9/12発表統計分)
2025年09月12日
-
2025年9月日銀短観予想
製造業で業況判断DI(最近)は改善も、先行きへの警戒感は強い
2025年09月10日
-
2025年4-6月期GDP(2次速報)
実質GDP成長率は前期比年率+2.2%に高まるも民間在庫などが主因
2025年09月08日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日