サマリー
◆政府は、2023年度(令和5年度)の公募にて、2025年度(令和7年度)末までに要件を満たすことを条件に、初めて国内の事業者が提供するクラウドサービス「さくらのクラウド」をガバメントクラウドに採用した。
◆ガバメントクラウドとは、デジタル庁を中心に整備が進められている「政府共通のクラウドサービスの利用環境」である。国・地方公共団体のシステムの共通基盤としてガバメントクラウドの利用を推進することで、利用者にとって利便性の高いサービスの提供を目指している。
◆ガバメントクラウドには、「高いセキュリティ水準」と「高い可用性(システムが使用できる状態を維持し続ける能力)」、及び「技術革新(データ分析や生成AIなど)に対応したマネージドサービスの提供」が求められており、従来は国内のクラウドサービス提供事業者1社で全ての応募条件を満たすことは難しかった。
◆その後、クラウドサービス提供事業者からの意見や、昨今の「データ主権」を巡る国外の情勢を踏まえ、求められる水準はそのままに、応募条件が一部緩和された。複数のクラウドサービス提供事業者が共同してサービスを提供する方法、サードパーティ製品を利用してサービスを提供する方法、2025年度(令和7年度)末までに要件を満たす計画を提出する方法などである。これにより、国内のクラウドサービス提供事業者がガバメントクラウドに採用される道が開かれた。
◆もっとも、ガバメントクラウドに国産初のクラウドサービス「さくらのクラウド」が正式に採用されるかどうかは、2025年度末までに政府が提示する全要件を満たすことが条件である。しかし、データ主権など経済安全保障の観点から、重要情報を取り扱うシステムにおいては国産クラウドが利用される可能性は高い。ガバメントクラウドとして採用された「さくらのクラウド」が、今後どのように利用されていくのかは注目すべきポイントだ。今後、日本のパブリッククラウドサービス市場が活性化していくことを期待したい。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
対日相互関税率は15%で決着へ-実質GDPへの影響は短期で▲0.5%、中期で▲1.2%-
相互関税以外の関税措置も含めると実質GDPは中期で3.2%減少
2025年07月23日
-
2025年6月全国消費者物価
政策要因でコアCPIの伸び率縮小も、物価の上昇基調は引き続き強い
2025年07月18日
-
2025年6月貿易統計
円高の進行やトランプ関税の影響で輸出金額は2カ月連続の減少
2025年07月17日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
-
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
-
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第225回日本経済予測(改訂版)
人口減少下の日本、持続的成長への道筋①成長力強化、②社会保障制度改革、③財政健全化、を検証
2025年06月09日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
「トランプ2.0」、外国企業への「報復課税」?
Section 899(案)、米国に投資する日本企業にもダメージの可能性有
2025年06月13日
日本経済見通し:2025年5月
経済見通しを改訂/景気回復を見込むもトランプ関税などに警戒
2025年05月23日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日