サマリー
2022年の日本は約50年ぶりの円安下でも記録的な貿易赤字を経験した。経済学的に見れば、貿易赤字は必ずしも悪いわけではない。だが背景を探ると、日本の輸出競争力の低迷や、円安で貿易収支が改善する条件(マーシャル=ラーナー条件)が満たされなかったという貿易構造の問題があり、その意味において現在の貿易赤字は懸念すべき状況といえる。
とりわけ大きな課題を抱えるのが輸出面だ。日本ではイノベーション投資の成果が他国に見劣りしており、企業が競争力を高める過程(プロダクト・サイクル)が適切に進んでこなかった。また、日本国内の事業環境としての魅力が乏しく、比較優位産業が国外に流出してきた。日本はもはや円安を追い求める段階にはなく、これらの課題の解決を通じて為替に左右されず輸出数量を安定的に伸ばす構造へと転換することが喫緊の課題だ。
他方、輸入面ではエネルギーなど必需的な重要品目の自給率を高めることで、円安時の貿易赤字圧力を緩和できる。重要品目の国産化など経済安全保障の強化を継続するほか、他国に見劣りするグリーン化(GX)への支援を加速させ、再生可能エネルギーの利用拡大などを進めるべきだ。
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