サマリー
◆地政学リスクが意識される下で「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」の交渉が進展する中、日本政府は技術流出を防止するため、7月23日から半導体製造装置の輸出規制を強化する。規制対象は23品目に絞られているものの、対象外の品目で対中輸出が減少する可能性や、最大の輸出先である中国市場の需要を取り逃がす機会損失は小さくない。今後の焦点は、中国政府による対抗措置の有無やその内容に移るだろう。
◆経済安全保障の観点から日本企業が過度な対中依存を減じていくとすれば、とりわけ財輸入において課題が大きいとみられる。日本のサプライチェーンはレアメタル・レアアースや、加工組立された部品(中間財)などで中国依存度が高い。こうした品目の貿易が制限されれば、日本の幅広い業種に大きな影響を及ぼすだろう。
◆IPEFや輸出規制を通じて米国などと緊密に連携する日本は、中国市場へのアクセスが将来部分的に制限されるリスクが徐々に高まっている。資源の安定供給や部品の生産拠点の分散化などに取り組む必要性は増しており、機械化・省人化投資の推進や、国家間の連携を通じた資源調達網の強化、官学との連携による代替市場への販路拡大などを進める必要がある。課題は山積しているが、経済損失を抑える「守り」の取り組みと、対内直接投資や国内投資の活発化など経済成長に繋がる「攻め」の取り組みを粘り強く推進していくことが肝要だ。
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