EUの移行措置から得られる日本への示唆

~グリーン化を受けた労働移動に関する取り組み~『大和総研調査季報』2023年新春号(Vol.49)掲載

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2023年01月23日

  • 和田 恵

サマリー

気候変動対策で悪影響を受ける産業・地域・労働者に対する移行措置(Transition)が必要だ。これは「公正な移行」(Just-Transition)と呼ばれており、EUでは経済復興のための基金「次世代EU」内に関連基金を設置するなど対応を進めている。英国では企業に対してスキル獲得支援を行った。

EUや英国の事例を踏まえると、今後の日本には雇用・スキルの見通しをもとにバックキャスティングで取り組むこと、スキルを監査・認定する仕組み、スキルを獲得しやすい環境、地域間を移動できる仕組み等の整備が必要となろう。日本と欧州の雇用慣行の違いを踏まえると、企業に対して従業員のスキル獲得を促す仕組み等、人材面から企業の移行を支援する形が求められよう。ただし、従業員のスキル獲得に向けた柔軟な勤務体制を含む働き方への配慮等の環境整備が課題だ。あわせて、個人に対する支援も必要だ。

日本で悪影響が大きくなると予想されるのが電力セクターであり、火力発電が縮小した場合、電力セクターやそのサプライチェーンに携わる産業の雇用が減少する。該当セクターの労働者のうち、3~4割は気候変動対策が進展する20年後にも現役世代であり、この層への支援が必要である。

大和総研調査季報 2024年春季号Vol.54

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