サマリー
◆米欧を中心に強制労働に対する姿勢が厳しくなっている。米国では2022年6月にウイグル製品輸入禁止法が施行され、欧州連合(EU)の欧州委員会は9月に強制労働を伴う製品のEU市場での流通を禁止する提案をしている。このような中、米国から強制労働と指摘されている日本の技能実習制度は、輸入停止などの事態の発生を回避するために、優先的に解決するべき課題の一つであると考えられる。
◆強制労働と指摘される要因として、実習実施機関における労働基準関係法令違反が定期監督等適用事業場よりも高い割合で発生しており、技能実習生(以下、実習生)からの相談内容でも同法令違反や技能実習法違反が疑われるものの割合が高いことが挙げられる。さらに、母国で借金をした実習生の割合は54.7%にのぼり、中でもベトナムは80.8%と非常に高く、債務労働に陥りやすい状況にいるといえよう。
◆実習生を取り巻く現在の状況には、技能実習制度の「国際貢献」「技能移転」という目的と「労働力確保」という実態との乖離からもたらされている部分が多い。両者の乖離を埋める方法は、①目的に即した運用を徹底する、②実態に即した制度に変更(労働力確保を目的とした特定技能制度に一本化)する、の二つが主に考えられる。ただし、いずれにせよ技能実習を経て特定技能になった者に対する強制労働の疑念や送出国での借金問題など、解決しづらい課題も残る。また、実習生の減少が更なる労働力不足につながることが予想されるため、日本政府は難しいかじ取りを迫られている。
◆他方で、日本政府は高度外国人材等を含めた日本の外国人労働者受入れ政策の全体図を提示し、その中で技能実習制度をどう位置付け、どのように改善すべきか、という視点も忘れてはならない。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2026年8月全国消費者物価
電気・ガス料金支援でエネルギー価格下落、コアCPI上昇率は低下
2026年09月18日
-
日銀、9月会合で1.25%に利上げ 今後も利上げ路線を堅持
家計の利払い負担増は賃金上昇が吸収も利上げ長期化リスクに留意
2026年09月18日
-
2026年8月貿易統計
中東情勢による資源高が続き、4カ月連続の貿易赤字
2026年09月16日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
-
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
-
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
-
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
-
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日
2026年ジャクソンホール会議の注目点は?
ウォーシュ議長はインフレ抑止に対する姿勢を明確に打ち出すか
2026年08月20日
“TACO”指数で読む トランプ大統領の“TACO”化の兆し
市場と世論が映す政策転換のサイン
2026年08月13日
高市政権誕生後の長期金利をどうみるか
2035年に3.3~4.0%程度で、海外保有拡大で更なる上昇も
2026年08月12日
第230回日本経済予測
円安・金利上昇下の日本経済と成長力強化への課題①AI活用による経済への影響、②資産市場と経済の好循環、を検証
2026年08月21日
GPIFガバナンス改革の功罪と課題解決の道
目先の運用見直しの可能性は低いが、硬直的運用への対応が課題
2026年08月13日

