サマリー
◆日本経済はバブル崩壊以降低成長を続けているが、その理由の一つに生産要素のミスアロケーションがあると先行研究等でも指摘されている。実際、1994年以降の実質GDP成長率をTFP要因、資本投入要因、労働投入要因、資本配分要因、労働配分要因に分解すると、主に押し下げているのは労働投入要因だが、近年は資本配分要因も押し下げている。
◆業種別に資本の配分の状況を確認すると、非製造業では資本装備率が過少な産業が散見される。資本装備率の過少感は特に宿泊・飲食サービス業で顕著で、2010年代では2000年代から一段と強まっている。背景には、不採算企業が市場に温存されており、企業の新陳代謝が低下していることなどが考えられる。また、労働コストが資本に比して安いことも過少投資の要因として挙げられる。
◆コロナ禍からサービス需要の回復が進み、労働需給のタイト化を通じて賃金が上昇すれば、宿泊・飲食サービス業における資本のミスアロケーションの改善が期待できるだろう。また、当該産業では中小零細企業が多く、大企業と比して資金調達コストが高い。M&Aなどを通した大規模化も資本の配分の改善に寄与するとみられる。中小企業のM&Aは公的な支援機関がハブとなるものの、キャパシティが圧倒的に足りない。このようなセクターに専門性がある人材が多く流入するためにも、官民連携に加え、専門人材の給与引き上げといった給与体系の見直しも重要になろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
インフレに負けない資産形成と消費拡大に向けて
金融リテラシー向上、将来不安軽減、中古住宅市場活性化等で資産効果を引き上げ
2026年08月27日
-
AI活用で日本経済はどう変わるのか?
AI活用推進による成長力強化は労働市場への悪影響の抑制とともに
2026年08月26日
-
変化する新卒採用の実態と展望
①早期化・長期化、②ジョブ型採用、③AIの普及の影響を考える
2026年08月25日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
-
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
-
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
-
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
-
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日
26年度最低賃金改定のポイント①
高市政権はより緩慢な引上げを容認/改定内容への説明責任が焦点
2026年07月09日
中国経済見通し:成長率目標に早くも黄信号
12.5%追加関税の影響は限定的だが、内需が急減速
2026年07月28日
令和9年度介護報酬改定に向けた注目点
改革工程に掲げられた重要論点の具体化が求められる
2026年06月29日
26年度最低賃金改定のポイント②
全国加重平均は1,160円台(4%前後の引き上げ)に着地か
2026年07月21日
骨太方針のポイント① ~危機管理投資・成長投資で高成長を実現できるか
米国を上回る生産性向上ペースが必要で成長戦略の進捗管理も課題
2026年07月13日

