サマリー
◆新型コロナウイルス感染拡大防止のための出入国制限により、日本における外国人留学生(「留学」在留資格保持者。以下、留学生)が減少している。19年末に34.6万人と過去最高を記録した留学生は、21年末には20.8万人まで縮小した。本稿では、留学生の労働力としての側面に注目し、留学生の減少が日本の宿泊業・飲食サービス業に与える影響について分析する。
◆日本に在留する留学生数の減少に伴い、その約8割を留学生が占める「資格外活動」在留資格保持者(以下、「資格外活動」)数も大幅に減少した。「資格外活動」は外国人労働者の19.4%を占め、その約1/3が宿泊業・飲食サービス業に従事している(21年10月)。在留資格の要件や受け入れ人数不足により、他の就業可能な在留資格保持者では同産業の主業務である接客サービス(単純労働とみなされる)をすることは難しいため、同産業では「資格外活動」は貴重な労働力となっている。
◆国内経済正常化とインバウンド復活への期待により、宿泊業・飲食サービス業における労働需要は高まっている。同産業の有効求人倍率(常用的パート)は、3回目の緊急事態宣言が解除された21年9月以降、上昇傾向にある。また、日銀短観の雇用人員判断DIでも人員不足に転じた。
◆政府は22年3~5月に「留学生円滑入国スキーム」を設け留学生を優先的に入国させたが、留学生数がコロナ禍前の水準に戻るにはまだしばらく時間がかかると考えられる。労働力不足が想定されつつも雇用の回復が鈍い宿泊業・飲食サービス業において、日本人労働者不足を補い、日本語での高いコミュニケーション能力を持つ留学生の不足は痛手となろう。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
関連のレポート・コラム
最新のレポート・コラム
-
米GDP 前期比年率+2.8%と加速
2024年4-6月期米GDP:内需主導での堅調さを維持
2024年07月26日
-
監査・ガバナンス強化へ回帰する英国
昨年撤回した監査強化方針を復活し、ガバナンス・コードも厳格化へ
2024年07月25日
-
女性がキャリアを築ける職場ほど、子どもを持ちやすい
健保組合ごとの被保険者・被扶養者の出生率と、その要因の多変量解析
2024年07月24日
-
GX経済移行債に期待されるインパクトレポーティング
~GXの理解醸成促進に向けて~『大和総研調査季報』2024年夏季号(Vol.55)掲載
2024年07月24日
-
盛り上がりに欠ける英国の政権交代
2024年07月26日
よく読まれているリサーチレポート
-
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
-
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
-
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
-
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
-
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日
「国債買入減額+利上げ」だけで長期金利は2%超えか
シナリオ別に見た日銀の国債買入減額による長期金利への影響試算
2024年06月12日
信用リスク・アセットの算出手法の見直し(確定版)
国際行等は24年3月期、内部モデルを用いない国内行は25年3月期から適用
2022年07月04日
第221回日本経済予測(改訂版)
賃上げ・物価高の先にある経済の姿と課題は?①賃上げ効果、②貿易デジタル赤字、③トランプリスク、を検証
2024年06月10日
「事業性融資の推進等に関する法律案」概要
事業性に着目した企業価値担保権の創設
2024年05月30日
バーゼルⅢ最終化による自己資本比率への影響の試算
標準的手法採用行では、自己資本比率が1%pt程度低下する可能性
2024年02月02日