「労働力」としての外国人留学生

宿泊業・飲食サービス業における貴重な労働力

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2022年06月22日

  • 矢澤 朋子

サマリー

◆新型コロナウイルス感染拡大防止のための出入国制限により、日本における外国人留学生(「留学」在留資格保持者。以下、留学生)が減少している。19年末に34.6万人と過去最高を記録した留学生は、21年末には20.8万人まで縮小した。本稿では、留学生の労働力としての側面に注目し、留学生の減少が日本の宿泊業・飲食サービス業に与える影響について分析する。

◆日本に在留する留学生数の減少に伴い、その約8割を留学生が占める「資格外活動」在留資格保持者(以下、「資格外活動」)数も大幅に減少した。「資格外活動」は外国人労働者の19.4%を占め、その約1/3が宿泊業・飲食サービス業に従事している(21年10月)。在留資格の要件や受け入れ人数不足により、他の就業可能な在留資格保持者では同産業の主業務である接客サービス(単純労働とみなされる)をすることは難しいため、同産業では「資格外活動」は貴重な労働力となっている。

◆国内経済正常化とインバウンド復活への期待により、宿泊業・飲食サービス業における労働需要は高まっている。同産業の有効求人倍率(常用的パート)は、3回目の緊急事態宣言が解除された21年9月以降、上昇傾向にある。また、日銀短観の雇用人員判断DIでも人員不足に転じた。

◆政府は22年3~5月に「留学生円滑入国スキーム」を設け留学生を優先的に入国させたが、留学生数がコロナ禍前の水準に戻るにはまだしばらく時間がかかると考えられる。労働力不足が想定されつつも雇用の回復が鈍い宿泊業・飲食サービス業において、日本人労働者不足を補い、日本語での高いコミュニケーション能力を持つ留学生の不足は痛手となろう。

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