サマリー
◆ロシアによるウクライナ侵攻を背景に、サプライチェーンの逼迫や資源高への懸念が高まっている。円安や資源高を受け、国内では既に素原材料から中間財への価格転嫁が進んでいる。他方で最終財への価格転嫁は鈍く、消費者物価指数の上昇ペースは緩やかだ。今後は中間財から最終財、そして家計への価格転嫁がどのように進むかが焦点となろう。そこで本稿では、資源高の波及による企業・家計への影響について分析した。
◆国内での高騰が予想されるのは、日本の輸入に占めるロシア産のシェアが高い品目だ。こうした輸入品の高騰に伴い海外への所得流出が予想されるが、この流出分は国内の家計や企業が主に負担することとなる。産業連関表を用いて2022年3月までに上昇した資源価格の影響を試算したところ、短期的な負担額は家計部門で2.0兆円、企業部門で2.6兆円と企業側の負担が大きくなるとみられる。ただし、時間の経過とともに価格転嫁が進むことで、最終的には家計部門が2.6兆円、企業部門が2.0兆円となる。
◆試算結果の内訳を見ると、サプライチェーンの川下で特に企業負担が大きくなることが分かった。最終的には資源高の影響の過半を家計が負担するとはいえ、企業負担も無視できない。とりわけ価格転嫁が進むまでは、負担額の大きい運輸・郵便、石油・石炭製品、化学製品、飲食料品、対個人サービスといった業種のうち、川下に近い事業者の負担が大きくなるとみられる。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
2025年4-6月期GDP(2次速報)
実質GDP成長率は前期比年率+2.2%に高まるも民間在庫などが主因
2025年09月08日
-
一億自己啓発社会の死角
データが示す、転職志向・子育て・ジェンダーにおける格差
2025年09月05日
-
2025年7月消費統計
需要側統計は強いが供給側は弱く、総じて見れば前月から概ね横ばい
2025年09月05日
最新のレポート・コラム
よく読まれているリサーチレポート
-
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
-
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
-
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
-
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
-
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日
2025年度の最低賃金は1,100円超へ
6%程度の引き上げが目安か/欧州型目標の扱いや地方での議論も注目
2025年07月16日
2025年ジャクソンホール会議の注目点は?
①利下げ再開の可能性示唆、②金融政策枠組みの見直し
2025年08月20日
既に始まった生成AIによる仕事の地殻変動
静かに進む、ホワイトカラー雇用の構造変化
2025年08月04日
米雇用者数の下方修正をいかに解釈するか
2025年7月米雇用統計:素直に雇用環境の悪化を警戒すべき
2025年08月04日
中国:2025年と今後10年の長期経済見通し
25年:2つの前倒しの反動。長期:総需要減少と過剰投資・債務問題
2025年01月23日