部品調達難で拡大する自動車減産の影響

自動車生産が66万台減少すると実質GDPへの影響は最大▲1.2兆円

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2021年09月15日

  • 経済調査部 エコノミスト 小林 若葉
  • 経済調査部 エコノミスト 中村 華奈子

サマリー

◆世界的な半導体不足に加え、新型コロナウイルス感染拡大の影響で日系自動車メーカーの部品調達先である東南アジアの工場稼働率が低下したことにより、自動車の減産規模が拡大している。仮に国内の自動車生産が2021年度に66万台(4-6月期の実績および現時点で判明している主要メーカーの見込み合計)減少すると、実質GDPへの直接的な影響は▲0.3兆円程度である。他業種への短期的な影響分を合わせると▲0.6兆円程度となる。影響が長期化すれば、サプライチェーンを通じて幅広い産業に悪影響が広がり、実質GDPの押し下げ幅は▲1.2兆円程度まで拡大する。

◆現時点で判明している主要メーカーの7-9月期の減産台数見込みは約29万台と4-6月期(約22万台)を上回り、GDPへの下押し圧力が大きくなる見込みだ。同様に、10-12月期の減産台数見込みは現時点で15万台である。各社は秋以降に挽回生産を計画しているが、先行きの東南アジアの感染状況は不透明だ。旺盛な需要を背景に、世界的な半導体不足の影響はさらに長引く可能性もあり、2021年度下期の挽回生産には限界もありそうだ。自動車生産は2022年度にかけて増加基調に転じるとみているが、増加ペースは緩やかなものに留まろう。

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