コロナショックと長期停滞論

『大和総研調査季報』2021年7月夏季号(Vol.43)掲載

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2021年07月21日

サマリー

本稿ではコロナショックの影響を長期停滞論の文脈から整理し、コロナショックが長期停滞を招き得るかを検証した。本稿から得られる含意は以下の通りである。コロナショック後に観察された貯蓄の偏在は家計部門全体で見た貯蓄性向の高まりを通じて自然利子率を低下させるリスクがある。企業部門に関しては、ゾンビ企業の増加や企業のリスク許容度の低下といった変化が投資需要の減衰と貯蓄性向の高まりを通じて、いずれも長期停滞を招き得る。ポストコロナの政策対応という観点では、経済社会活動の正常化とともにコロナ対応で急拡大した歳出規模を平時の水準に戻すことが課題である。短期的には景気に悪影響を及ぼす可能性があるものの、中長期的には産業の適切な新陳代謝を促し、企業の投資意欲を高めることや、政府債務の拡大がもたらす経済成長の低下圧力を緩和することが期待される。

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