サマリー
本稿ではコロナショックの影響を長期停滞論の文脈から整理し、コロナショックが長期停滞を招き得るかを検証した。本稿から得られる含意は以下の通りである。コロナショック後に観察された貯蓄の偏在は家計部門全体で見た貯蓄性向の高まりを通じて自然利子率を低下させるリスクがある。企業部門に関しては、ゾンビ企業の増加や企業のリスク許容度の低下といった変化が投資需要の減衰と貯蓄性向の高まりを通じて、いずれも長期停滞を招き得る。ポストコロナの政策対応という観点では、経済社会活動の正常化とともにコロナ対応で急拡大した歳出規模を平時の水準に戻すことが課題である。短期的には景気に悪影響を及ぼす可能性があるものの、中長期的には産業の適切な新陳代謝を促し、企業の投資意欲を高めることや、政府債務の拡大がもたらす経済成長の低下圧力を緩和することが期待される。

大和総研調査本部が長年にわたる知識と経験の蓄積を結集し、的確な現状分析に基づき、将来展望を踏まえた政策提言を積極的に発信していくとのコンセプトのもと、2011年1月に創刊いたしました。
このコンテンツの著作権は、株式会社大和総研に帰属します。著作権法上、転載、翻案、翻訳、要約等は、大和総研の許諾が必要です。大和総研の許諾がない転載、翻案、翻訳、要約、および法令に従わない引用等は、違法行為です。著作権侵害等の行為には、法的手続きを行うこともあります。また、掲載されている執筆者の所属・肩書きは現時点のものとなります。
同じカテゴリの最新レポート
-
次世代型企業研修の最前線
対話型AIやメタバースを活用した人的資本形成の効率化・高度化
2025年11月10日
-
2025年9月消費統計
衣料品など半耐久財が弱く、総じて見れば前月から小幅に減少
2025年11月07日
-
人手不足下における外国人雇用の課題
労働力確保と外国人との共生の両立には日本語教育の強化が不可欠
2025年11月06日

