サマリー
◆2020年8月11日に公表された総務省「労働力調査」の「詳細集計」を分析すると、2020年4-6月期は「勤め先や事業の都合」を理由に休業した人や、就業時間が週35時間未満に減少した人が急増した。他方で非労働力人口に注目すると、とりわけ就業希望を持たない者の増加が目立った。この点、コロナショックは労働需要だけでなく労働供給にも悪影響を及ぼしたことが確認できる。
◆世帯の構成員ごとに就業状況を見ると、世帯主の配偶者とその他の家族、とりわけ世帯主の子が労働市場から退出する傾向にあった。世帯主の配偶者では、特に7~14歳の末子を持つ妻が労働市場から退出しており、小中学校の臨時休校の影響が大きかったとみられる。世帯主の子のうちでは、学生の非労働力化が顕著だった。自らの就業を「不要不急」と見なしたケースのほか、先行き不透明感の強まりからひとまず就業しないことを選択したケースなどがあったとみられる。
◆2020年4-6月期に非労働力化した世帯主の妻や子は、社会経済活動が再開していく中で徐々に労働市場に復帰するとみられる。ただし注意したいのは、世帯主の妻や学生が就業しやすいサービス業の労働需要の回復が遅れることで、雇用のミスマッチが拡大しかねない点だ。新型コロナウイルス感染拡大の長期化が予想される中、政府は世帯の経済状況にも目を配り、必要な支援策を適宜実施していくことが一層重要になりそうだ。
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